【第859回】 仙骨

これまで腰腹と手を結ぶとか、腹を十字に返すなどと、技と体のつかい方を研究してきた。これで大分上手く技をつかえるようになったことは確かであるが、これではまだ不十分であることがわかってきた。十分に力が出ていないこと、体がまだまだ一つに動かないこと、そして気が出にくいことである。
そこでそうすればいいのかを片手取り呼吸法などで研究していると、腰腹と手を結び腰腹で手をつかうよりも、腰にある仙骨をつかうと上手くいくようになった。言うなれば、これまでの筋肉から骨に換えたわけである。気流・柔・剛の柔から剛に換えたとも言える。

何故、仙骨にそれほどの働きがあるのかを調べてみると、その理由は:
  1. 腰椎・背骨をすぐ両隣で支えている『胸最長筋(きょうさいちょうきん)』が、仙骨を始まりとして首の根元まで続いているから
  2. おしりの一番大きな筋肉『大殿筋(だいでんきん)』と繋がっているから
  3. 太ももの大きな骨『大腿骨(だいたいこつ)』と、たくさんの筋肉で繋がれているから
  4. 仙骨は人体における動きの中心支点となるから
  5. 上半身は仙骨の1点で支えられていて、仙骨で受けた上半身の力は恥骨〜股関節を通して両足へと伝えられるようになっているから
  6. 仙骨は”運動連鎖”の起点と中継点であるから
片手取り呼吸法など技をつかう際は、これまで腰腹でやっていたものを仙骨でやることになる。腹を横・縦と十字に返していたのを、今度は仙骨でやるわけである。これを“仙骨を入れる”と大先生は言われておられるようだ。従って、仙骨を入れるとは仙骨を十字に返すということであると考える。返すのは水火の息づかいである。もう少し言えば、布斗麻邇御霊のとアオウエイのウのみ働きである。

大先生は、武産合気は仙骨から発するのだといわれていたという。つまり、魄の合気道から武産合気に変わるためには仙骨から発する力(気)をつかわなければならないということであり、仙骨をつかわなければ真の合気にはならないという事になるわけである。
また、動けばすべて技にならないといけないともよく言われておられた。
ということは、いつでも技がつかえるように、いつも仙骨を入れておかなければならないという事になる。

仙骨にポイントを置いて大先生や有川定輝先生や、また、大先輩の塩田剛三先生などの映像を見ているとその凄さの秘密が少し見えるようになった。自分が仙骨の働きを身につけて行けば、更にその秘密が見えてくるはずである。
仙骨の鍛練をしなければならないと思ったところである。