【第855回】 体の関節を鍛える

技を練って体をつかっていくと、体がいろいろ教えてくれるようになる。ここはこうした方がいいとか、これは駄目だとか、また、ここが弱いから鍛えろとか伝えてくるのである。体の声が聞こえるようになったのは、自分が素直になったからだと考える。若い頃のように、体をがむしゃらに、粗末に扱っていれば、体の声など聞こえないだろうし、体も何も言ってくれないはずである。体の声を聞き、それを実践し、そして体の声に感謝するのである。

さて、最近の体の声は、「体の関節をもっと鍛えよ」であった。体の関節がまだ十分に頑丈ではないので体の力がまとまらず、分散したり、散逸してしまうから、いい技がつかえないということなのである。これまで関節は意識して、技でつかってきたつもりであるが、まだ、十分ではないというのである。確かに、これまで特に手の関節や足の関節を鍛えてきたが、あらためて鍛えなければならないというので、体の関節をあらためて鍛え直すことにした。

合気道の技につかう主な体の関節は、手と足と首の次のような関節であろう:
<手の関節>: 指(親指・母指球、他の指)、手首、肘、肩、胸鎖関節
< 足  >: 指(親指・母指球、他の指)、足首、膝、腰(大腿骨・股関節)  
< 首  >: 頚椎と呼ばれる7つの骨、頭蓋骨とを結んでいる関節
これらの関節をすべて鍛えるのである。一つでも脆弱な関節があれば、技は乱れるし、最悪、日常生活でも支障を来すことになる。これまでも関節は鍛えなければならないと思いながら技の稽古をしてきたつもりであるが不十分だったということである。関節を鍛えるという事の意味や重要性、そして鍛え方がよく分からなかったわけである。

基本的な関節の鍛え方は、相対稽古での技の掛け合いである。技を掛け乍ら、関節を意識してつかうのである。例えば、手首を鍛えようとするならば、手首に気と力を入れ、手首を体(支点)とし、手首から先を用につかうのである。そのつかいかたは、手首から手先に息を吐き、手先を縦に進め、次に、手首から先を息を引いて横に拡げ、そして息を吐いて手先を縦に出して手をつかうのである。十字の息づかいと、手首から先に手先を縦横の十字につかって、そこを固く柔らかくなるように鍛えるのである。これは縦の十字の鍛えであるが、横の十字の鍛えもある。腹の十字の動きに合わせて、手首を縦横十字につかうのである。
この手首と同じように、手の各関節を鍛えるのである。また、足の関節も同じように鍛えればいい。
これによって各関節の先の箇所が鍛えられ、その関節部が堅固になるのである。これが武道でいうところの、肩を固めるとか肘を固めるということだろう。

最後に首があるが、首の関節も鍛えなければならない。
首の関節は腹、足、手がばらばらにならずに一体で動けば首もそれらと一体で動く。よって、腹と首関節を結び、手足同様、腹と結んで、腹で首をつかうようにすることである。これが出来るようになると、手足同様に、首(頭)でも技を掛けられるようになる。(今はやらないが、入門当時はやっていた)

これらの関節を鍛えるのは、基本的には相対稽古であるだろうが、自主稽古や単独稽古でもできる。また、徒手だけではなく、木刀の素振り、杖の素振り、鍛錬棒の素振り、居合、また、四股踏みでも鍛えることができる。
更に、歩いていても足の各々の関節の鍛練もできる。関節を鍛えると真剣に思ったなら、体はいろいろ教えてくれるはずである。

技は一番弱いところで崩れるわけだから、弱い個所(関節)がないように鍛える必要がある。また、体の関節が頑強になれば技も変わるようである。