【第854回】 からだと仲よくする

若い頃は体をこれでもか々々と酷使していた。極限まで走ったり跳んだり跳ねたり、ラケットの素振りをしたり、筋トレをしたりと極限まで鍛えた。そして体はそれに答えてくれたし、喜んでくれた。もし、不十分な鍛えだと体が満足してくれないし、気持ちも満足できなかった。
体は、酷使するぐらい十分に鍛えることによって仲よくなれていたと思う。頑張り合う同志というところであろう。

高齢者になっても、体と仲よくしなければならないのは変わらないが、仲よくのなり方が違ってくる。特に、合気道を修業しているとそれが分かる。
高齢になって、体と仲よくなるためには、体を大事に扱うことになる。
まず、毎日、体を禊ぐ事である。舟こぎ運動や剣杖の素振りや単独動作で体のカスを取り、その後、目、鼻、口、耳を水で禊ぎ、頭をマッサージし、今日もよろしくとご挨拶する。

また、体が錆びつかないように、毎日、体を動かすことである。体が動きたくなると、そういってくるはずなので、その声を聞いて実行することである。
陰陽十字の足づかい、息に合わせた足運びなどを教えてくれる。また、もう少し足を鍛えた方がいいとか、ここの階段を上れとか、今日は道場稽古で十分鍛えたから、駅のエスカレーター使用を許可するともいってくる。時々逆らって、階段を上ると、その後、ゼイゼイ、ハアハアと息切れがして苦しくなり、先ほどの体の声を聞いていればよかったと体に謝罪したりすることになる。

更に、合気道道場での技を練る際は、体が喜んでくれるように働いてもらうことである。そのためには、無理をしない、体に負担を掛けないことである。つまり、技と体が理合いで自然に動くようにすることである。
体を大事に扱って体と技をつかうと、ここはこうやれ、これは駄目などと体がいろいろ教えてくれるのである。体と仲よくなり、体と対話をすることになるのである。

体と仲よくするために体を大事にしなければならないが、大事なことがある。それは栄養と睡眠である。若い頃は、栄養や睡眠などそれほど気にしなくとも、体は元気に働いてくれたが、年を取ってくるとそれを意識しなければならなくなってくる。
まず、栄養のバランスと食べる量に注意する。食べる量が減る傾向にあるので、時々、外食で若者も食べる分量を食べて、胃が小さくならないようにしている。また、三食欠かさないようにしている。
更に、たんぱく質、カルシュウム、ビタミンの食物を欠かさないように注意している。

最近は大分仲よくなれたようで、対話が増えているようだ。
思うに、体と仲よくできなければ、体は何も教えてくれないから、奥深い合気道の技づかいを身につけるのは難しいはずである。
体と仲よくしたいものである。