【第853回】 足の親指が中心に

手の親指も、足の親指も親指の働きは重要であることが分かり、その後、それを意識して体をつかい、技をつかってきたが、親指の重要さが確信されただけでなく、親指には更なる重要な働きがあることがわかってきた。
尚、親指とは、親指という指の部分とその下の母指球の部位であるが、ここでは親指とする。以前は母指球でいいだろうと考えていたが、後で説明するが、この箇所は足の十字をつくる線にならなければならないので、母指球と親指と合わせて親指としたわけである。勿論、足も手も同じである。
       
親指には大事な働きがあるのだが、実際に働くのは親指自身ではなく、その周りの部位である。親指自身が自在に動いてしまうと技にならない。これは手の親指づかいで説明した通りである。呼吸法(片手取り・坐技等)で親指を初めに動かしてしまったら力も気も出ず、腕力に頼ることになるわけである。親指は中心、支点として働かなければならないのである。親指は他の指のように派手に動かないが、親指には他の指以上の力と気が満ち、しっかりした土台になるのである。この親指が土台になる事によって横軸ができ、多の指の縦の働きができるようになるのである。

足の運びは後ろ足の横(━)と前足の縦(|)の十字であるが、中々十字の足になって歩くのは難しいはずである。多くの場合は、前足と後ろ足が十字ではなく平行になっている。
足が十字なって歩くのも、技を掛けて足が十字になるのも、親指の働きがなければならないからである。親指が内回転したり、外回転しなければならないのである。このためには踵から体を地に着け、体重を踵から爪先・親指に移動しなければならない。はじめから爪先・親指に体を地に落とせば親指は内回転も外回転も出来なくなり、身動きが取れなくなる。

親指を回転させるのは腹である。腹の向きを変えることによって親指が働くのである。このためには体を面としてつかい、体を捩じらない事が必須となる。腹、足、手、顔が面となって返るのである。

これで分かった事は、体には三つの動きの中心、つまり支点・土台があるということである。
一つ目は足の親指、二つ目は手の親指、三つ目は腰腹である。
これからこれらの中心を大事につかい、更に鍛えていかなければならないと考えている。