【第851回】 手の内と親指

前回「第850回 親指の驚異的な働き」で親指の働きがいかに大事かを記した。その後、この法則に則って技をつかっていくと、更にいろいろな事がわかってきた。親指の更なる働きと重要性、及び親指が上手く働くために必要な事等である。

片手取り呼吸法を力一杯やってみれば分かるが、相手がしっかり掴んだ手は中々思うように上がらないものである。そこでこれまで腰腹と結んだ手の親指を支点として小指側を返し々々しながら技を掛けるといいと書いてきた。
しかし、これでもまだ十分な力が出ないのである。諸手取呼吸法でやってみるとそれが分かる。
更に力が出るようにしなければならないのである。

片手取り呼吸法で更なる力が出るようにするためには、まず、支点となる親指を更に強靱にしてつかわなければならない事がわかった。強靱にするとは、親指に気を満たすことである。息と気で親指を強靱にするのである。この状態で親指を支点(体)として小指側を用としてつかっても結構大きな力が出るが、まだ、不完全であると感じるし、また、手先と体の一体化が十分に感じられなく、手で技を掛けているように感じるのである。

この問題を解消する必要があるが、それを見つけた。それは、親指に力と気を十分満たしていくと、手の平が拡がり、手先から腕、更に肩ロックが外れ、腕の気が胸、腹、つまり気と力が体中に満ちる事になるのである。手の平とは武道で云う手の内である。この手の内を、親指を支点として返し々々つかうのである。手の内を見せる(相手に見せる)、そして手の内を見る(己を見る)の繰り返しである。

有川先生の手の内と親指
尚、親指に力と気を満たすと肩が貫けるが、更に手の内に力と気を満たすと、貫けた肩から手・腕が自然に上がってくる。また、不思議なことに反対側の手の内も同調して働いてくれるようになるのである。
過って、有川定輝が芸術とも云える正面打ち一教や呼吸法を見せて下さった。(写真)そして手はこうつかわなければならないと、手の内をこちらに見せるようにしておられたが、どうしても手の内を見せるような体と技はつかえなかった
そしてこの親指と手の内に十分働いてもらう事によって、それが出来るようになったわけである。