【第85回】 波動と「魂のヒレ振り」「山彦の道」

これまでの世界は物質文明、パワーの世界、ハードの世界ということができるが、この世界にはいろいろな矛盾や問題が充満してきて、なんとかしなければならないところまできているようだ。そこで、次に期待されるのはモノ(魄)ではなく、魄の上にくる魂の世界、ソフトの世界である。そうなれば世界は単純で、調和のある、共生(協調)でき、開けっ放しで、自由で公平な、融合性のある、アナログ的で、真に効率的で、長所進展(いいところをどんど伸ばして生成発展する)の世界になるだろうと、椛D井本社会長の船井幸雄氏は語っている。(「もうすぐ次元上昇か」徳間書店)

また船井氏はこのために21世紀は必ず「波動の時代」が来ること間違いないともいう。

合気道でも若いうちはパワーをつけ、体力を鍛えなければならないが、高齢者になり、高段者になればソフト、魂、こころの稽古に移行しなければならない。魄のパワーには限界があるが、魂には限界がない。

合気道では相手に受けを取ってもらって自分の「わざ」(技と業)を磨いていくが、技を掛ける上で最も大事なことは、相手に触れた瞬間に相手と合気(気むすぶ)しなければならないことである。

開祖の手もそうであったが、上手い人が触れた瞬間に気持ち良さを感じ、離すのがもったいないような気になるし、こちらの力みが無くなって、相手のなすがままに動いてしまう。

船井氏ば、「人間の体は、自分のことをとてもよく知っています。自分の体にいいものに触れたら、筋肉がやわらかくなり・・。」という。これは波動と関係があるということができるかも知れない。波動というのは、世の中のものすべてが発している微弱なエネルギーといわれ、人間の体も、そして人間の思いも波動を出しているという。この波動には、(1)同じものは引き合う(2)違うものは反撥し合う(3)自分の出した波動は自分に返って来る(4)優位の波動は劣位の波動をコントロールできる等の性質があるという。

合気道の稽古は、自分の波動を精錬し、よりレベルの高い波動になるようにすることとも言えるのではないだろうか。これを合気道では「魂のヒレ振り」「山彦の道」というのだろう。優位のものが劣位のものをコントロールするだけでなく、劣位のものは優位な波動を受け、エネルギーのレベルアップができるのである。ここにもレベルの差のあるもの同士が一緒に稽古をする意味があるわけである。