【第847回】 自分から後進へ

今回でこの論文は847回になる。毎週1篇づつ書いてきたから、16年以上書いていることになる。
この論文を何故書くようになったのかは、当初、自分でも分からなかった。
まずは書きたかったから書いた。書き初めには書きたいテーマが既に数10編たまっており、それを早く書きたくてうずうずしていた事を思いだす。
この「高齢者のための合気道」の他にも「合気道の思想と技」「合気道の体をつくる」「合気道上達の秘訣」も同時に書いている。この4つのテーマで書くことも、それほど深く考えもせずに、自然と決まってしまったわけだが、今ではいいテーマにしたものだと自分で感心しているし、突然そう決まっていたことに驚いている。後で思うのだが、自分とは別の何かがそうさせているように思える。

これらの論文で書いてきたことは、己の合気道の精進のためである。技を上達させるためにはどうすればいいのかということである。このために大先生がどのように教えておられるのか、何をどうしなければならないのか等を研究し、問題をみつけ、その解答を書いてきたわけである。
今になるとわかってくるのであるが、ほとんどの問題と答えは、合気道の技の法則であったのである。つまり、宇宙の法則を見つけ、それを身につけることであったのである。

はじめは技が上達するために、技をどうつかうとか、体にどう働いてもらえばいいのか等を研究していたが、段々と天地や宇宙と結び、それと一体となり、その力をお借りして技をつかわなければならないと思うようになった。
天地、宇宙の規模での次元で稽古をするようになると、前の次元の稽古が見えて来るようになる。前の稽古は目に見える顕界であり、物質文明、魄の稽古であり、それが目に見えない次元の幽界の稽古、精神世界の稽古に入ったということである。

また、この次元の稽古に入ってくると、大先生が教えておられる合気道の目標が明確になってくる。しかし、大先生は、合気道の目標は宇宙との一体化であると、もう一つ、合気道は地上楽園建設の生成化育であると二つを云われているので、以前は混乱したが、この次元に入るとそれが解る。
宇宙との一体化は個人の合気道修業の目標であり、地上楽園建設の生成化育は人のため、万有万物のための目標ということである。いうなれば、小乗の目標と大乗の目標ということになる。勿論、大乗の目標を達成するためには、小乗の目標を達成しなければならないという事になる。

これまでこの辺までのことがわかり、この論文も自分のため、そして他人(合気道家、興味のありそうな人)を意識しても書くようになった。
しかし、最近、この論文を書く主旨が少し変わってきた。
それは合気道を学ぶ後進のためにも書かなければならないと思うようになったことである。後進の為に少しでも多くの事を書き残すことである。己が研究し、分かった事を少しでも多く残すことである。これは後進のためになるだろう、これは後進が知らなければならない等の大事と思う事を書くのである。しかし、年を取ってくるとあと何年も稽古が出来ないと実感するようになる。時間との戦いである。だからそう思うようになったようだ。

論文が1000回になれば、大分気の利いた事が書けるのではないかと、取り敢えず1000回を目標にしている。これからは、自分のためだけでなく、後進達が参考になるようにも書いていきたいと考えている。

最大の仕事は財を遺すこと、名声を得る事ではない事はわかっている。やはり人を育てることだろう。少しでもお役に立てればいい。