【第847回】 阿吽の呼吸へ

「合気はある意味で、剣を使うかわりに自分の息の誠をもって悪魔を払い消すのである。」(合気神髄P.13)という。つまり、合気道の技は息でかけるというのであり、息が大事であるという事である。
また、合気道は魂の学びであり、魂魄阿吽の呼吸であるという。「阿吽の呼吸の理念力で魂の技を生み出す道を歩まなくてはならない。」(合気神髄 P.12)というのである。

このように合気道の技は息・呼吸で生み出していかなければならないことになる。前から書いているように、肉体的な力の魄の稽古から脱出するためには、まず、肉体主動から息主動、つまり、息で体をつかい、技をつかうようにすることである。
この息づかいの理想は阿吽の呼吸であるが、初めから阿吽の呼吸で技をつかう事は難しい。阿吽の呼吸は魂の技を生み出すとあるように、魄ではなく、魂の次元の息づかいだからである。高次元の息づかいであり、まずはそこに行くための息づかいを身につけなければならないと考える。

合気道の技を生み出すための息づかい、呼吸には大きく分けて次の三つがあると考えている。

  1. イクムスビ(イーと息を吐き、クーで息を引き、ムーで息を吐く)呼吸
  2. 布斗麻邇御霊・アオウエイの言霊の呼吸







  3. 阿吽の呼吸
これまでイクムスビと布斗麻邇御霊・アオウエイの言霊の呼吸は研究したが阿吽の呼吸はこれからの課題である。
阿吽の呼吸がどのような呼吸なのかを研究し、身につけるにあたって考えなければならない事、つまりヒントになることがある。それはイクムスビにしろ、布斗麻邇御霊・アオウエイの言霊の呼吸にしろ、そして阿吽の呼吸にしろ、結局は同じ呼吸であるはずだということである。息を吐いて、息を引く(吸う)、そして息を吐くということである。一つの合気道の技をイクムスビでも布斗麻邇御霊・アオウエイの言霊の呼吸でも生み出していくわけだから、阿吽の呼吸でも同じように技が生まれるはずである。

実際にこの三つの呼吸で技を生み出していく事ができるわけだが、この三つの呼吸には何かの関係、つまり次のような相関関係があるように考える。
阿吽の呼吸 布斗麻邇御霊・アオウエイの呼吸 イクムスビ
阿(ア) アオウ

イク
吽(ウン) エイ
このように阿吽の呼吸の阿(ア)には、布斗麻邇御霊・アオウエイの呼吸のアオウの言霊、つまり天と地を結び、腹中に縦横十字による気を生み出し、そしてイクムスビのイクの縦と横の十字の気を生み出す呼吸であると感得する。

阿吽の呼吸の吽(ウン)は、布斗麻邇御霊・アオウエイの呼吸でのエイであり、イクムスビの呼吸のムと関係すると感得する。

従って、阿吽の呼吸をつかう場合は、その呼吸の中に、布斗麻邇御霊・アオウエイの呼吸もイクムスビの呼吸も含まれていると思ってつかえばいいだろう。

阿吽の呼吸は魂の技を生み出すと言われるから、阿吽の呼吸を身につけていかなければならない。