合気道の稽古をしていくと大きな壁にぶつかる。これは誰でも同じく体験するようなので法則、宇宙の法則と云えるだろう。それは魄の稽古の限界の壁である。腕力や体力に頼る稽古の限界である。
これまで記してきたように、魄の稽古に限界を感じてきたら、次の稽古に移らなければならないと書いてきた。それは息による稽古である。息で体と技をつかうことである。魄の稽古では肉体がその力で体と技をつかっていたのを、今度は息が体を導き、技をつかうようにする息主動の稽古である。
しかし、息で体と技をつかう息づかいは容易ではない。稽古相手や稽古仲間に教えるのだが出来ないのである。考えてみれば当たり前の事である。私自身も、かっては出来なかったし、出来るようになるにはある程度の日数が必要だったわけだからである。その己の経験からも分かるのだが、何故、息で体と技がつかえないかというと、息をする腹と胸が十分に機能しないからである。腹と胸が固まっており柔軟性がなく、十分に伸びちじみしないし、大きくも膨らまないのである。故に十分な呼吸ができないのである。従って、まずは腹と胸を柔軟に機能するように鍛えなければならないことになる。
そこで次に、腹と胸をどのように鍛えればいいのかということになる。
いろいろな方法があるはずだが、私がやっている方法は「いくむ(すび)」の息づかいである。