合気道の形(かた)と「わざ」を稽古するにあたって、相手を打ちにいったり、またそれを捌いたり、技をかける初めの動作は円でなければならない。正面打ちや横面打ちで相手が打ちに来る時の手先も、それを受ける手捌きの軌跡も、肩や胸鎖関節を中心にした円である。片手取り四方投げでも、持たれた手先は、通常は「ハラ」を中心にした円を画くように使わなければならない。円を画かずに直線で動くと、相手に脇を締めさせたり、相手の前に立つことになり、技が効かないだけでなく、相手に反撃される死地に立つことになる。もちろん、技をきめる最後は直線的動きもある。
「合気というのは、初め円を画く。円を画くこと、つまり対象力。」と開祖は、「合気道新聞No.58」で言われている。手の動きは基本的には、上下、斜め上下左右、横左右、突きの9つであるが、突きを含んですべて、「ハラ」を支点とした円の軌跡である。合気道の突きは空手のような直線的なものではなく、下げた手を弧を画いて突く。この動きは短刀を使ってやると分かりやすい。空手のように手を脇に構えてから直線で突くと、合気道ではなくなる、と故有川師範もいわれた。
「わざ」の初めに円を画くのは手先の軌跡だけではなく、腕の回転運動もきれいな円を画かなければならない。この回転がないと、相手の力を弱めたり、合気の引力で相手の手をくっ付けておくことはできず、相手の手を逃してしまうことになる。この腕の回転は指先の円運動ともいえる。小指を支点とした内回転と、親指を支点とした外回転である。