【第836回】 股関節と肩甲骨

前回の第835回の「縦の動きを大切に」で書いたように、体と体の中心の腹と結んでいる手と足を横○━⇒縦○|に動かせば大きな力が出るので諸手取等も上手くできるようになる。
何故上手くいくのかというと、これは宇宙の営みに則り、宇宙の法則に合しているからである。
これを大先生は、「合気は天の浮橋に立たされて、布斗麻邇(ふとまに)の御霊、この姿を現すのであります。これをことごとく技にあらわさなければならないのであります。これはイザナギ、イザナミの大神、成りあわざるものと成りあまれるものと・・・。」(合気神髄P.153)
つまり、この横○━⇒縦○|は“イザナギ、イザナミの大神、成りあわざるものと成りあまれるものと・・・”に該当するわけである。

しかしながら、この○━と○|を横⇒縦につかうのは容易ではない。体と息をつかってやるのだが、思うようにいかないのである。息を吐いて腹中の気を横(━)に開き、そして縦(|)にするわけだが、腹中の気が十分横に開かないし、縦に落ちないのである。また、多少は横に開き、そして縦に落ちるのだが不十分なのである。

この稽古を試行錯誤しながら大分やってきたところ、この解決法を見つけた。
それは股関節をつかう事である。腹を横に開く際、腹だけを開いても上手く簸られないが、腹で股関節を開くと大きく開き、腹中に気が充満するのである。まさしく○━を実感するのである。そして○━で腹中に気が十分満たされたら、その気で股関節を地に落とすのである。腹中の気が縦に働き○|を実感することになる。
すると腹中の気と股関節は○━と○|が合わさり○十となる。

○十から気が縦に胸まで上がってくるが、息はこれまでの吐く息(○)に変わって引く息(□)になる。息を引き乍ら胸中を横に拡げ横に気を拡げると縦横の十字となり、□十ができる。
しかし、腹と同様、胸を拡げるだけでは十分な気が胸中に満ちないのである。その問題を解消するのは肩甲骨である。腹と股関節との関係同様、胸と肩甲骨をつかうのである。胸で肩甲骨を拡げたり、肩甲骨で胸を拡げ気を満たすのである。

合気道は顕界、幽界(霊界)、神界を禊がなければならないわけだが、顕界、幽界、神界の技づかいをしなければならないことになる。つまり、目に見えるモノと見えないモノを禊ぐ、つまり、つかうということになるだろう。
この場合、○十では、見えるモノは股関節であり、見えないモノは気(心、魂等)、□十では、見えるモノは肩甲骨であり、見えないモノは気ということになるだろう。
見えるモノは物質的働き(魄の働き)をし、見えないモノの気は精神的働き(心、魂の働き)をすると考える。つまり、この物質的な働きを基にし、精神的な働きが上になって物質的な働きを誘導、主動するということである。
故に、土台となる股関節と肩甲骨も鍛錬しなければならないわけである。