【第832回】 宇宙と一体となるとは

これまで何度も、宇宙と一体となるように稽古をしなければならないと書いてきた。合気道の修業の目標は宇宙との一体化であるからである。これは合気道の小乗の目標であるが、修業するにあたって最も大事な事である。もし、この目標を持たずに稽古しても、道を違えたり、方向を失う事になり、精進はないことになる。因みに、合気道の大乗の目標は地上楽園、宇宙天国建設の生成化育であるが、小乗の宇宙との一体化を果たせなければ、大乗の目標を果たすことも難しいはずである。

これまで、宇宙と一体となるために、宇宙の営みを形にした技を練って身心に取り入れていかなければならないと書いてきた。陰陽十字、円の動きの巡り合わせ、三元八力の気・流・柔・剛、動静・解疑・強弱・合分等である。
これらの宇宙の営みは宇宙の法則でもあり、法則に合すれば技や体は上手くつかえるが、法則に反したつかい方をすれば、いい技、いい動きにならないし、体も心も満足してくれないのである。
このように、宇宙の法則に則って宇宙の営みを心身に取り入れて、宇宙と一体となる必要性を実感するのである。

ここまでは以前に書いてきた事である。今回はこれを土台にして、更なる宇宙と一体となるためにどうすればいいのかを書いてみたいと思う。
まず、これまでとどこが違うかと云うと、以前の宇宙との一体化は主に目に見える顕界での一体化であったわけだが、今回の一体化は目に見えない次元においてである。具体的に謂えば、”気“による一体化ということである。
己の気と天地、宇宙の気を結び、その気の動きに従って技と体をつかうのである。これまでは己の体で技をつかっていたわけだが、今度は、少し大げさに言えば、天地、宇宙が己の体と技をつかうことになるのである。

それが出来るためには、宇宙の大法則であるフトマニに従わなければならない。これまで何度か説明してきた布斗麻邇御霊の形と営みに則って息、技、体をつかうのである。布斗麻邇御霊の七つの御霊の動きは気の働きの形でもあるので、この気の流れに己の気を合わせて一体化するのである。アオウエイの神音でやると効果は大きいことも分かっている。
例えば、アーで天の御中主になったつもりで気を天まで広げ、体を気で張ると、天、宇宙と己が一体となったように感じる。また、オーでその気を地に下ろし、腹を締めると己が大地と一体となる感じがする。また、この動きに手の動きを合わせると、天の気と地の気により引力が働き、天の浮橋が生まれ、天の浮橋で技と体をつかうことになる。相手の手や体に触れても強力な力、気の力が出るので、指一本でも相手を制したり、導くことが出来るようになる。自分を超越した、宇宙と一体となった力である。
この宇宙と一体となった力、気の力を、腕力では難しい諸手取呼吸法でやってみるといい。相手が力を込めてしっかり掴んでくる諸手取呼吸法で対処するのはこれがいいはずである。

この布斗麻邇御霊の気の形は△○□になるから、すべての技はこの△○□でつかい、収めることになる。また、剣を振り上げ切り落すのも△○□でやればいい。これを合気剣、松竹梅の剣法と大先生は言われたのだと思う。

いずれにしても、宇宙と一体となるためには“気”を感得し、つかえるようにならなければならないようだ。
尚、「合気道の思想と技の『第８３４回 気の感得』で“気”の感得について書くことにする。