【第831回】 母指球をつかう・鍛える

前回の「第830回足の親指も手の親指のようにつかう」で、手と足の親指を、どっしりとした親のようにつかわなければならないと書いた。
手と足の親指を意識してつかっていくと、前回の文章でちょっと触れているように母指球に働いてもらうと、手と足の親指の働きが更によくなることを実感することになったので、今回は前回の続きとして「母指球」について研究することにする。

母指球(ぼしきゅう)とは、「手のひらや足の裏の親指の付け根のふくらんだ部分」であり、手と足にあるのである。母指球を拇指球と書いたり、足の母指球を母趾球と表記する場合もあるようだが、ここでは、手も足も「母指球」をつかうことにする。

合気道の技をつかう際に、いい技を生むためには体を気で満たし、頑強で柔軟な名刀のような手をつかわなければならない。そのために手は真っすぐに伸び、折れ曲がらないよう、そして刃筋が通り、気で満ちるようにしなければならない。
この名刀の手をつくるためには、無暗に力を入れたり、力を込めても出来ない。これは只の力みになってしまう。頑強で柔軟な名刀の手をつくるためには、まず、前述のように、親指に気と力を満たし、気を出し、次に他の指に気を満たし、気を出す(縦)。そして小指側を気で拡げ(横)ると手・腕に気と力が満ち名刀のようになるわけである。

これを踏まえて、今度はこれまでの親指から、その下部にある母指球から気と力を出すと、更に強力な力が出るし、切れ味のいい名刀の手になるのである。
手が伸びて指先も真っすぐにならなければならないわけだが、親指をつかった場合は、十分に真っすぐにすることは難しいもので、母指球をつかう事によって上手く出来るようである。
また、手先を先に進めたり、横に返す場合も、親指中心で返すよりも、母指球中心で返した方が上手くいく。

足の母指球も手と同じように大事である。母指球の働きによって足の親指が上手く働いてくれる。体重を支えてくれるし(縦)、十字(横)に体を返すのもこの母指球である。母指球の働きによって、足も名刀のよう強靱な足にしなければならない。

母指球は手も足も大事であり、鍛えなければならない。はじめは意識してつかえばいいだろう。