【第825回】 引く息の火で体をつくる

これまで合気の体をつくろうといろいろやってきた。例えば、イクムスビの息づかいで名刀のような手をつくろうとしたし、直近では、気によって気・流体、柔体・固体のみそぎをすることによって、気に満ちた体をつくろうとした。
この気・流体、柔体・固体のみそぎによって、引く息の火で体をつくっていくと、次のような事が分かってきた。
一つは、体だけではなく、気も血液や体液などの流体、肉や筋肉などの柔体、骨や関節などの個体もそれぞれみそがなければならない事。みそぐとは鍛える事であるという事。つまり、体をつくるということは、体をみそぐ事である。
二つ目は、特に、息を吸い込む事が大事である事である。思い切り吸い込まないと、気・流体、柔体・固体に気が流れず、しっかりした体も部位もできないのである。大先生は、「息を吸い込む折には、ただ引くのではなく全部己の腹中に吸収する」と謂われているが、この事だと感得する。
三つ目は、前項に関係するが、息を思い切り吸う(引く)と気が出てくる、気が発するという事である。これも合気道のパラドックスである。息を引くから気が出るのである。息を吐いて気を出そうとしても難しい。
四つ目は、過ってから、不思議に思っていた大先生の教えである、「引く息は火であり、吐く息は水であるということが分かったことである。過って、引く息が火であり、吐く息が水であると聞いた時には、不謹慎にも、これは間違いであろうと思ったし、長い間、間違いだと思っていた。しかし、イクムスビの呼吸で体と技をつかうようになると、引く息は強力なエネルギーがあり、確かに火であると実感するようになった。そして吐く息はその火を抑える水であると感得できるようになり、技と体につかえるようになった。
五つ目は、フトマニ古事記のお蔭で、大先生の教え、○は吐く息で水、□は引く息で火であるという事が分かり、つかえるようになった。
六つ目は、気・流体、柔体・固体のみそぎを精一杯やると、気が昇って身中に火が燃え、気というものができ、霊気が満ちてくる事である。

大先生は、「自分の息をこう吸ったら、自分の魂が入ってくる。」(「合気真髄P100」や「この世において、目に見えざる火水が体内に通って、肉に食い入り血肉の血行となっている。これを魂という」( 武産合気P.54)と謂われているが、引く息の火で体をつくっていくとこの教えとつながり、次の次元の魂の道に進めるのではないかと期待しているところである。