【第822回】 ウの言霊が技産みの基礎根源

大先生の「フトマニ古事記によって、技を生み出していかなければなりません」の教えに従って、布斗麻邇御霊の形象に則り、アオウエイの言霊で技をつかうようにしている。それまでの腕力やイクムスビの息づかいでやっていたよりもいい技が生まれることは確かである。ここでのいい技とは、途切れず、ぶつからず、力強く、受けの相手を導き、そして相手も己自身も納得する技とする。

しかし、時として、相手の強力に打ったり、掴んだりの攻撃に対応できず、動きや息が止まったり、乱されてしまう事がある。所謂、力不足である。そこでこの力不足を何とか解消したいと考えていた。
力不足の原因は二つある。一つは、力そのものが弱い事。二つ目は、力の出し方、つかい方である。力が強い弱いは先天的なものがあるわけだから、強くしようと努力しても限界があるし、いずれ更に力が衰えていく事も分かっている。故に、稽古で力の出し方、つかい方を意識することにしている。

これまで分かったことは、ウの言霊に、もう少し多く働いてもらう必要があるということである。
まず、「宇宙のいとなみが自己の内にあるのを感得するのが真の武道なのであります。」(武産合気P.48)とあるように、真の武道を探究するわけだが、そのためには宇宙の営みを自己のうちにも営んでもらわなければならない事になる。それが布斗麻邇御霊である。これはこれまでやってきたわけであるが、これに何かを補充、改善する必要があるわけである。

そんな時に次の大先生の教えと出会った。
「合気はこのナギナミ二尊の鳥生み神生みに基礎根源をおいているのであり、これを始めとしているのである。合気に志す方々は、この神生み鳥生みをよく学んで頂きたい。」(武産合気P83)
つまり、技が生まれる基礎根源は、伊邪那岐神の御霊と伊邪那美神の御霊であるということである。また、これまで記しているように、この御霊はウの言霊で生まれる。そしてウの言霊は、「ウはみ魂を両分して、一つは霊の根源を生み、一つは物質の根源を生んでいる。」(武産合気P.48)。また、「那岐、那美二尊の島生み神生みに準じて、このありとあらゆるすべての霊の元、体の元を生みなして、完成されるところのみ心、み振舞に基づいて、武産合気は生まれたのです。」(武産合気P60)とある。ウの言霊が、霊と体を生むのである。そして霊の根元と体の基礎根源が働きはじめる。この基礎根元の体と霊が強力な力を生むことになるわけである。実際、ウの言霊で技と体をつかうと、それまでにない強力な力が生まれるものである。ウの言霊によって、体に力がみなぎり、霊もみなぎる。ウの言霊なしではこれは不可能であると思う。例えば、諸手取呼吸法はこのウの言霊でやらなければ、十分な力は生まれない。
ウの言霊での体と霊のみなぎりにより、気を感じ、つかえるようになるようだ。そして気で体と技をつかえるようになるのである。気で技をつかうとは、気が体や息に先行して技と体を導くことであると感得する。つまり、初めの内はどうしても、まず体を動いて技をつかうのだが、息が体に先行し、息が体を導くようにし、そして気が息と体に先行して技を生み出していくということである。