【第822回】 言霊とは
これまでも言霊について何回か書いたが、今回もまた挑戦することにする。その理由は、言霊が些かであるが分かって来たようだからである。これまでは、言霊について書くには書いたが、第三者の解説であったと思う。大先生の教えをただ抜き出して書いた、頭の中での言霊だった思う。
今回は、己自身が実感し、実践して心と体が教えてくれる言霊で、以前よりも前進したと思う。そこで今の己の言霊観を書いて見たいと思った次第である。
今回のこの言霊論文を、<言霊とは><合気と言霊><言霊のつくり方・生み方><言霊の働き>に分けて書くことにする。独善的に走らないように、いつものように、大先生の教えに叛かないよう書くために、大先生の教えをその土台として引用することにする。そしてその大先生の教えを解読すると同時に、己の考えを書くことにする。(*、斜字)
<言霊とは>
- 「タカアマハラのラの一言霊が六言霊を悉くふくめて天底から地底へ、地底から天底へ、・・・」(武産合気P.48)
*タカアマハラの一言々々が言霊であるということである。
- 「七十五声の本能の動きがすべて言霊となるのであり・・・」(合気神髄p.132)
*アイウエオ・・・の75声のすべて、如何なる声も言霊になるということである。特に、アオウエイの言霊が分かり易く思う
- 「言霊とは声とは違う。言霊とは腹中に赤い血のたぎる姿をいう」(武産合気p.21)
*しかし、言霊は只の声・言葉とは違うということである。これを大先生は、「言葉は魄、言霊はひびきです」(合気神髄 P.51)と云われている。宇宙組織のひびきということである。稽古をしていると分かってくるが、只の声だけでは、何も起こらないが、声が言霊になると、摩訶不思議な事が現われてくるのを体験する。特に、アオウエイは摩訶不思議な言霊であると感激している。
<一般的な言霊観>
参考のために書く。
昔は、言葉によって、物事が変化する、という言霊信仰をもっていた。言霊は単語、または一音にあるように、古く神道家は解いていたが、文章あるいは、その固定した句において、はじめてある事実である。文章に霊妙不可思議な力がある、という意味からして、それが作用すると考え、さらに神の言葉に力があるとし、今度は語の中に威力が内在している、と考えた。それを言霊と言い、その威力の発揚することを、言霊のさきはふ(さちはう)と言うた。(折口信夫)
<合気と言霊>
- 「合気とは言霊の妙用であり・・・・」「合気とは言霊の響きによる禊の業をいうのである。」
*言霊を上手くつかわなければ技(業)が生まれないし、禊ぎにならず、合気にならないということである。タカアマハラとアオウエイを大先生は大事だと言われ、詳しく説明されているから、それをこれからやっていけばいいと考える。
<言霊の生み方・生まれ方>
- 「合気は天の浮橋に立たされて、布斗麻邇(ふとまに)の御霊、この姿を現すのであります。これをことごとく技にあらわさなければならないのであります。」
*合気の技は、布斗麻邇御霊の姿で現わさなければならないということである。布斗麻邇御霊の姿をアオウエイの言霊によって現わすのである。このアオウエイが言霊になるわけである。その言霊の生まれ方を、大先生は次のように云われておられる:
「ス声が生長して、スーとウ声に変わってウ声が生まれる。絶え間ないスの働きによってウの言霊が生じるのである。ウの霊魂のもと物質のもとであります言霊が二つに分かれて働きかける。御霊の両方をそなえている。一つは上に巡ってア声が生まれ、下に大地に降ってオの言霊が生まれるのである。上にア、下にオ声と対照で気を結び、そこに引力が発生するのである。」(合気神髄P111)
「ゆえに、オなら「オ」、ウなら「ウ」と発声する折には、体内の血は躍動し、必ずその活力となり、姿は描かれ、同時に光となり、熱となり、生技発声となります」(合気神髄P.77)
*アウオエイのアーで声を発すると、己が天地・宇宙に拡がり、アーとオーが結び、足が地を踏むことになる。これに合わせてオーと発すると、腹と左右の足で反転反転の円運動が起こり、ウーと繋がり腹中が横、縦に働き赤玉ができる。ウーの言霊で腹が出来ると実感する。ウーとエーは自然に結びつき胸が拡がり息が満ちる。エーの言霊で胸が出来ると実感する。エーの言霊の末にイーの言霊が結びつく。イーの言霊によって摩訶不思議な力、真澄の玉が出る。
要は、言霊を発し、働いて貰うためには、布斗麻邇御霊の運化に則ってアオウエイの声を発して技をつかわなければならない事になるようだ。因みに、布斗麻邇御霊をアオウエイではなく、他の声に代えると言霊にならず、体も技も上手く働いてくれない。
また、タカアマハラもこの声一つ一つが言霊になると同時に、一つのまとまった造化器官で、すべてのものを生み出す家の働きをするわけである。一つの言霊でも欠けたり、入れ替わってしまえばその働きが出来ない事になる。
最後に、言霊の働きについて、大先生の教えを記す。
<言霊の働き>
- 「言霊を発することによって現象界において何らかの変化を生じせしめるし、言霊の響きによって宇宙万物が生成されたと言われる。」
*「言霊の響きによって宇宙万物が生成された」ということは、合気道の技も言霊によって生成されるという事になる。言霊が発せられれば、技が生まれるということである。
- 「合気道では宇宙と一体となることによって、空間に満ちている霊的力を自己の中に呼び込むことを行なうのであり、そのためには言霊の響きを使わなければならないとされる。響きの呼応によって高いレベルの気を呼び込むのだという。色も、味も、香りもこの気の動きによって生じ、言霊の妙用の根源もここに存するのである。」
*言霊の響きによって霊力を得ることが出来るということである。また、言霊の響きによって気を得ることができる
言霊を避けて精進することは出来ないようだ。言霊を研究し、身につけていかなければならない。
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