佐々木合気道研究所

【第819回】 手の親指を鍛える

これまで手の親指のつかい方は大事であると書いてきた。手の親指は無暗に動かすと技にならない。手の親指は支点となり、体となりつかわなければならない。何故ならば、合気道において、手（手先から肩まで）は剣としてつかうので、相手を突いたり、切ったりするために、刃筋が通らなければならないからである。素手で正面打ちや横面打ちをすればそれがわかる。それが自覚出来れば、剣をつかった場合も同じであることがわかるはずである。
坐技呼吸法や諸手取呼吸法でしっかり掴まれて上手くいかないのは、この手の親指のつかい方にも原因があると思う。

が、もう一つ手の親指には問題がある。それは手の親指が十分にしっかりしていない、強靭でないことである。つかい方がよくとも、力不足では駄目だという事である。故に、手の親指も鍛えなければならないことになる。
手の親指の一般的な鍛錬は、合気道の技を練ることによってすることになるが、それでは不十分であると思えば、意識して次のような鍛錬稽古をすればいいと考える。

• まず、これまでも書いてきたように、坐技呼吸法や諸手取呼吸法をこの親指を動かさないでやることである。また、相対での逆半身片手取り転換法でやるといい。手先と腹を結び腹て手先を返すわけだが、手の平も親指を支点（体）とし、親指に意識と力を集中して、手の平を縦から横に返すのである。尚、この手の平の返しが不味いと親指に力が集中できないので、この返しは大事である。
• 次はこれまでと一寸違う。手の親指に気を満たして、気で手、体、技をつかうのである。気はこれまでよく分からなかったが、ようやくこれが気であろうと感得できるようなので、それを気としてつかうことにする。
  手先に気を満たすためには、気を生み出さなければならない。気は十字から生まれるといわれるので、相手に掴ませた手先と己の腹とを十字にし（横の十字）、更に己の前に出した手を横に拡げて（膨らませ）十字にすると強力な力が生まれる。この力が気と感得できるわけである。気は手の平全体に満たされるわけだが、その気を親指に集めると親指が強靭になり、鍛えられることになるわけである。
• 上記の気で親指を鍛えるにも息づかいが大事であるが、簡単にするために分けた次第である。
  息で手の親指を鍛えるということである。
  このために最も簡単な息づかいはイクムスビのイクムの息づかいであり、これで鍛えればいい。イーと息を吐き手と手先を伸ばし、クーと息を引き乍ら、手と手の平を更に伸ばすと気が入ってくるから、そこで親指に意識して気を満たす。ムーで息を吐いて手の親指を中心に気を出していく。
  この息づかいを基にして、阿吽の呼吸と布斗麻邇御霊の息づかいでも手の親指を鍛えることができるはずである。

前にも書いたが、親指は指の親である。どっかと控えている指である。他の指をまとめ、活動を支持する中心である指である事を実感する。
手の親指には更なる働きと役割があるように思える。また、手の小指も大事な働きと役割があるわけだが、この手の親指と小指の関係と働きについてもいずれ研究しなければならなくなるだろう。