【第810回】 陰陽十字の法則を試す

入門してからしばらくの間は、道場での相対稽古をすればするほど上達するが、或る期間がくると、それまでのような上達の勢いはなくなるものである。
それで更に一生懸命に稽古をするのだが、上達している感じにならないし、稽古相手に頑張られたり、返されたりしてしまうようになるものである。
しかし、多くの稽古人が、この状態にあるように見える。

これまでこの項では、「合気道の上達の秘訣」について書いてきた。いろいろと書いてきて800編以上になる。自分がこれまで、合気道の上達をするために研究してきた事を書いたわけであるが、これを読んだ多くの人は、そんな秘訣があるなど信じなかったり、真剣に技に取り入れて技の錬磨をする事はないように思う。まあ、一つの参考として頭に入れて置こうぐらいなのではないかと思う。何故、このような事を云うかと云えば、「合気道の上達の秘訣」や私の論文を読んでいると思われる相手と稽古をして、その技を見ていると、そのような技づかいをしないのである。頭では分かっているのだろうが、技で表現していないのである。つまり出来ないのである。そこで、私の研究して書いた秘訣を、一寸稽古相手に技で示してやると、その効果とやり方に気づき、そしてその秘訣の真実を確認・確信するようになるのである。

技が上手くいかずに迷っている相手には、まずは合気道の技づかいの公式と云える、「陰陽十字」も体づかい、技づかいをやるように導いている。導くとは、ひとつは受けで導くことであり、二つ目は、技と手や口で導くのである。合気道では、稽古中に口をきかないことになっているので、極力、口は閉じているが、場合によっては、最小限の単語で(勿論、周りには聞こえない声で)導くことにしている。

自分の経験上、呼吸法では誰もが苦労しているはずである。とりわけ、諸手取呼吸法がその典型であろう。
腕力をつければある程度はできるが、腕力がその問題の本質的な解決をしないことが段々と分かってくる。しかし、それでは腕力の代わりにどうすればいいのかがわからないのである。そして多くの稽古人はこの状態にあると見ている。

この状態から抜け出し、先に進むためには、法則に則った息と体と技をつかわなければならないと考える。具体的にどうすればいいのか、そしてそれで本当にいい技が生まれるのかという事になるが、これをやれば、誰でも、少なくても、それ以前よりは上手くいくやり方があるはずであると思う。

諸手取呼吸法(右半身)でやることにする。細かいことは省くことにして、要点だけを書く。

取り敢えず、この★の事に注意してやれば、相当上手くいくはずである。

諸手取呼吸法で要領が分かったら、片手取り呼吸法を繰り返し稽古することである。片手取り呼吸法が出来れば、他の技も相応に上達するはずである。有川定輝先生もそう言われておられたし、私もそう思う。

合気道の技には法則があり、その法則に則ってしっかりやれば技が活きてくるし、上達があるということである。