【第808回】 股関節の重要性を再認識

これまで、合気道で技をつかう際は、合気道の体をつくり、気や力が出るように体をつかわなければならないと書いてきた。そして、そのつかう体の中心は腰腹であり、体の中で最も重要であるので、腰腹を大事につかわなければならいとしてきた。例えば、手先と腰腹を結び、腰腹で手をつかわなければならない。足も腰腹と結び腰腹で足をつかわなければならない等である。

これは大事な事で必要なことであることは間違いない。しかし、これで十分ではなく、万全でない事がわかってきたのである。
この腰腹主体で技の稽古を続けて行くと、また、壁にぶつかることになるのである。例えば、生み出す力に限界があることが分かること、そして、腰を痛めるようになることである。痛めないまでも、痛めるだろうなという心配をするということである。
そこでこの腰腹主体の技と体づかいの稽古法を変えなければならないことになる。結論を云えば、股関節をつかう事である。

股関節
股関節(写真)は、両脚のつけ根にあり、骨盤と 大腿骨を連結している関節である。上体(上半身)と下体(下半身)を連結し、それぞれ独立したり、連動して働かせる部位である。
従って、これまでは腰腹がこの役割をすると誤解していたことになる。

腰腹に換えて股関節をつかった方がいいと確信するきっかけとなったのは、朝起きて寝床から立ち上がる時、腰が刺激されて痛みを感じていたので、腰腹に負担を掛けずに、股関節に体重を掛けて起き上がったところ、腰の痛みを感ぜずに、スムースに立ち上がれたことである。そしてこれを機に、道場での稽古の時も、歩行の際も、股関節をつかうことにしたのである。

股関節をつかうとは、上体の体重を股関節に落とすことであり、そのために腹を股関節の上にし、腰を支点として十字に返すことである。この動きによって腰への負担は無くなるので腰を痛めることはなくなる。つまり、腰を痛めるのは、この股関節のつかい方が悪いためであるということになる。

更に、この股関節のつかい方が間違っていない事を確証、そして実感できたのは、布斗麻邇御霊の営みによる。これまでを身に着け、技に取り入れようとしているのだが、なかなか思うようにいっていない。特に、の息を吐きながら、腹中に息(気)を引き乍ら、腹を横に返すのが、この股関節をつかう事によって出来るようになったのである。つまり、股関節をつかわない、腰腹だけでは、布斗麻邇御霊の動きは出来ないということである。更に、股関節をつかう事によって、の気の働きを実感できるようになったのである。

人の体は宇宙と同じように出来ており、営まれるといわれるが、この股関節のお蔭で、更にそれを実感しているところである。