【第790回】 「ア、オ、ウ、エ、イ」と「ス、ウ」

「合気道は天、地、人の理により悟り、宇宙の大道、言霊の大妙用たることを深く知ることが肝要である」(合気神髄P108)。そして、「精進するための技はフトマニ古事記によって、生み出していかなければなりません。」(武産合気P.77)という。布斗麻邇御霊の運化に合して体と息をつかい技を生み出していくわけである。
これまで書いてきたように、その七つの御霊をアオウエイの息で働かせるのであるが、これが容易ではないのである。
先ず、の息づかいの複雑さである。○は息を吐くき、□は息を引くわけだが、その○や□の中にある━、|で息を吐いたり引いたりしながら、同時に更に息を引き(━)、息を吐く(|)と二重の息づかいになるからである。しかし、これは普段でもつかっている息づかいなので、意識して稽古をしていけば身につけることができるので、それほど問題がないだろう。その息づかいは、普段でもつかっているはずで、例えば、歌をうたう、祝詞をあげる、お経をあげるなどでつかっているはずである。歌や祝詞で声を出すわけだが、お腹の中では、息(気)を縦横十字にも動かしているはずである。胸で息を吐き、腹で更に息(気)を出したり、引いたりするわけである。

難しさはもう一つある。これが難問なのである。後で分かるわけだが、この問題はこれまでの知識や方法では解決出来ないからである。新しい解決法が必要になるからである。
その問題は最初の御霊のアーである。アーと息を吐くわけであるが、この息を上にあげるのか、下に下すのか、それとも前に出すのかが分からないのである。分からないということは、これでいいという実感が持てないということである。体が感じ、反応してくれないのである。
更に、の・は何なのか、どのような息づかいをすればいいのかが分からないのである。

この問題を解決してくれたのは「ス、ウ」である。このス声とウ声がア声をどのように発すべきなのかを教えてくれるのである。
まず、大先生はこのス声とウ声について次の様に教えておられる。
「ス声が生長して、スーからウ声に変わってウ声が生まれる。絶え間ないスの働きによってウの言霊が生じるのである。ウの霊魂のもと、物質のもとであります言霊が二つに分かれて働きかける。御霊の両方をそなえている。一つは上に巡ってア声が生まれ、下に大地に降ってオの言霊が生まれるのである。」(合気神髄P111)
つまり、ス声からウ声が生まれ、ウ声から上に巡ってア声が生まれ、下に大地に降ってオ声の言霊が生まれるのである。
そして、「スとウの働きによって、魂と肉体との不離一体の交流によって、腹の底から「ア、オ、ウ、エ、イ」を身体の口から鳴り出さしめる」と、「ス、ウ」が「ア、オ、ウ、エ、イ」の息づかいに結びつき、そして働かせるというのである。

「宇内の活動の根源として七十五声があり、ス声はその大元であり、霊と体、万有万物を創られた」という。これを大先生は、「スの御親、七十五(ななそいつつ)を生みなして森羅万象を造りたもう」と詠われておられる。
「ス」声はすべてのものを生みなした御親であるが、一元の御親、一元の本、一元、元津御親の親神、大御神、大神様などと称されている。

ここまで、「ス、ウ」と「ア、オ、ウ、エ、イ」を見てくると、ある事が見えてくる。それは大宇宙と地球との関係である。つまり、「ス、ウ」は大宇宙創造、そして「ア、オ、ウ、エ、イ」は地球創造の息づかいであるという事である。「ス、ウ」の息づかいが、「ア、オ、ウ、エ、イ」の地球創造の息づかいに結び、そして導くということである。つまり、問題になっていた「ア」声は、「ス、ウ」に導かれなければならないという事である。

この世は、一霊四魂三元八力のご活動によって出来上がっている。一元の現れであるこの世界は、物の根源と霊の根源で営まれている。これが「ス、ウ」の一霊四魂の世界である。体については三元八力という働きがある。これが「ア、オ、ウ、エ、イ」の世界であると考える。大先生は、「この三元八力が固体の世界を造り、人類社会もそれによって完成されてゆくのである。」(武産合気P.101)と教えておられるのである。