【第788回】 愛

今、新型コロナとかで世の中が混乱している。好きに出掛ける事も出来ないし、好きなお酒を飲みに行くことも出来ない。政府や都や府がいくら注意をしたり、お願いをしても感染が収まる様子はない。こんな状態が一年以上続いているし、更に後どのくらいで終息するのか分からず、皆不安や諦めや憤りで、世の中の雰囲気はあまり良くない。特に良くないと思うのは、国の首相や当該大臣、都知事の注意やお願いを国民や都民、市民があまり聞かないし、守らなくなってきたことである。関係者も都民も市民もコロナ感染を抑えよう、日常生活を取り戻そうとしてする共通の目標を持ちながら、上手くいっていないのである。

ふと考えてみた。もし、大先生が今の日本の現状をご覧になったら、どのように思われるだろうかと。
大先生は最早いらっしゃらないが、合気道には大先生の教えがある。その教えに照らしてこの問題を考えればいいと考える。つまり、大先生がいらしたとすれば、『武産合気』や『合気神髄』にある教えのように云われるはずでだからである。
恐らく、今の様な状況を良くするためには、政府や都に対して「愛を売り込みなさい」と云われると思う。そうすれば、「その愛が人の心を呼び出す」(合気神髄P.47)ので,国民も都民、市民もその言を聞き、協力するということである。

「愛」とは、この場合、政府が本当に国民を幸せにしよう、日本をいい国にしようとする心、気持ちである。ただ呪文のように唱える愛ではない。心の底から出てくる愛でなければ、国民の心を呼び出すことはできない。自分の利益、自分が関わる利益団体などを優先して国に不利益になるようなら、それは本当の愛ではない。本当の愛でなければ、国民は不快に思うし、心を閉じてしまう。
「愛」は強くなければならない。コロナ禍脱却のために、いい国に戻すためにいろいろやることがあるし、やり方もある。いろいろ難しいことや出来そうもない事もあるし、雑音も入るだろうが、国や国民のためという愛があればそれは出来るだろうし、迷いも断ち切り、誘惑にも負けないはずである。並はずれの信念と勇気が要るはずである。

そこで印象的だった国とその首相を思い出した。ドイツのメルケル首相である。メルケル首相は、コロナ感染を何としても抑えなければならないと、真剣に涙声で国民にマスクの着用や外出を控えるように訴えた。首相が本当に国を思って訴えておられたことが分かり、愛の深さを感じた。私のような外国人も感動したわけだから、この愛がドイツ国民の心を呼び出したことは間違いない。
勿論、メルケル首相の国を想い、国民を思う気持ちは、コロナだけでなく、これまでの政治での基本的な気持ちであり、それを実践してきたわけで、その愛が国民の心をつかみ、国民もメルケル首相を信じていたのだと思う。逆に、愛が無い政治をやっている政治家が、コロナだからといってあれこれ言っても、国民、市民はその言葉を受け入れないし、協力していい国にしようともしないだろう。

合気道の教えは、合気道も経済、商売も先ず愛を売り込めということである。
愛の政治を待ちたい。