【第788回】 宇宙の営みを取り入れていく

これまでは、稽古の意味がよく分かっていなかった事がよくわかる。稽古を長年続けていれば上手くなるものと思ってただ稽古を続けてきていた。確かに、稽古を長くやればやるほど上手くなり、強くもなる。しかし、これはある処までである。また、これは相対的な意味でである。つまり、稽古相手が下手だったり、弱いということである。先輩達が少なくなり、後輩がどんどん増え、その結果として先輩の位置に押し上げられるわけだからである。自分がどれだけ上達したのかが分からないということである。それ故、合気道は、試合が無いこともあって、俺が俺がと天狗になる危険性がある。

或る処から強敵が現われる。誰にでも現われる。それは“老い”という強敵である。この強敵と戦うためにも絶対的な稽古をしなければならないことになる。相手がどうのこうの云っている場合ではない。
絶対的な稽古とは、真の合気道の稽古である。この段階では稽古というより修業という方がいいと思う。
真の合気道を大先生は武産合気といわれていると思う。宇宙と一体化する合気道である。
合気道は武道であるから、老いたから弱くなった、下手になったということになっては稽古・修業の意味がない。逆に老いてますます盛ん、つまり、上手くも強くもならなければならないと考える。

このためにこれまでのような稽古をしていたのでは体も技も衰えるので、稽古のやり方、考え方を変えなければならない事になる。
それではどうするかである。
合気道は技(形)を練って精進するが、これは合気道でも真の合気道でも変わらないはずである。只、その技の練り方、稽古のやり方・考え方を変えなければならないということになる。これまでの相手を倒せばいい、極めればいいというのではなく、やるべきことを一つずつやり、積み重ねていくのである。

やるべき事とは、大先生が言われる宇宙の営み・法則である。これを技(形)の中に取り入れていくのである。(陰陽十字、イクムスビ)、陰陽水火、布斗麻邇御霊、あおうえいの呼吸、摩擦連行作用等を正面打ち一教、四方投げなどの技(形)、呼吸法、四股踏み、剣や杖の素振り、居合等々に取り込んでいくのである。
合気道の次元でも、陰陽十字、イクムスビの法則に則って技をつかわないと上手く技は効かないが、真の合気道でもこれを踏まえて、更なる法則を見つけ、つかうようにしなければならない。これらの宇宙の営みを技つかうようになると、それまで上手くいかなかった技の動きが上手くいくようになる。そして技は宇宙の法則に則らなければ上手くいかないということを実感することになる。

しかし、容易ではない。体づかい、息づかい、気づかい等非常に微妙で繊細である。これまでの稽古の比ではない。稽古ではなく修業と云う方が合っているように覚える。
これらの宇宙の営みで技をつかわなければ、老いをカバーすることは出来ないし、また、体を壊すとも、大先生は注意されている。
宇宙の営みを取り入れていく事である。