【第784回】 腕力に頼らないために
相対稽古で腕力をつかうまいと思っていてもどうしても使ってしまうものである。
駄目だと思いながらも使ってしまう主な原因は二つあると思う。
一つは、心のどこかで、腕力を使って何が悪いと思っていること。二つ目は腕力を使わずにどんな力を使うのか、そしてその力をどう出し使えばいいのかが分からないことだと思う。
まずこの問題を解いていかなければならないだろう。
第一の原因の問題である。
先ず最初に、腕力はなければならないし、強ければ強いほどいいということを自覚し、腕力をつけなければならないということを知らなければならない。これは合気道だけではなく、武道の基本である。従って、初めの数年間の稽古期間は、腕力がつくように力一杯稽古をしなければならないことになる。しかし、その内にその腕力では上手くいかず、力の限界を感じるようになるはずである。この段階で、腕力をつかい、腕力に頼っては駄目であるという事になるのである。
次に、第二の原因の問題である、腕力を使わずにどんな力を使うのか、そしてその力をどう出し使えばいいのかということである。
腕力とは字が示す通り、腕の力でやることである。簡単に言えば、腕を振りまわすことと云えよう。腕を振りまわすということは、手先と腰腹が結んでおらず、手・腕だけが動いているということである。
それでは何故、手・腕だけで、腰腹に結ばない力では駄目なのかというと、
- 大きな力が出ない
- 相手が打ってきたり、掴んでくる手にくっつかず、弾いてしまい合気にならない。典型的なのは、後ろ両手取である。手を腕力でつかうと相手の掴んでいる手から己の手が外れてしまい、相手を自由にするので、首を絞められたり、抱えあげられてしまう危険になるのである。
- 故に、腕力では相手の打ってきたり、掴んでくる力を制し、相手を導くことが難しいということになる。
それでは、腕力でない力はどうすれば出てくるのか、それはどんな力なのか。
- 最も基本的なことは、腰腹と手先・腕をしっかり結び、そして腰腹で手をつかうことである。腕力より強い腰腹の力が出る。
- 己と相手との接点を直接動かさず、その対極や腰腹で動かすことである。接点を動かすから腕力に頼ることになるのである。
- 腕力ではなく体力(体の力、体重)をつかう。とりわけ、技をつかう初動で相手と接する時には大事である。どうしても腕を出してしまうから腕力になるのである。体が入っていって体力をつかわなければならない。
しかし、体から入っていくのは難しい。タカミムスビとカミムスビの摩擦連用作用でやらなければならないからである。この事は、その内に別の回で書いて見たいと思う。
- 息、イクムスビで体と技をつかう。イーと息を吐き、クーで息を引き、そしてムーで息を吐いて体と技を収めるのである。腕力で技をつかうのではなく、息で技をつかうのである。腕力の魄の次元から、魂の次元の稽古への中間次元であると考える。
- 体を陰陽十字でつかう。体、特に手と足は右左右・・と陰陽で動かなければならない。また、特に、腰は十字々々でつかわなければならない。この法則を乱せば、必ず腕力に頼らざる得なくなるはずである。
- 体は、腹→足→手の順でつかわなければならない。手から先に使えば、腕力でやるようになる。
まだまだある。つまり、まだまだ法則はあるが、取り敢えず、これらを注意して身に付けていけば、腕力に頼らないようになるし、腕力と異質で強力な力がつくり出されるはずである。
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