【第783回】 布斗麻邇御霊とアオウエイと陰陽十字で

合気道は技を錬磨しながら精進していく武道であるが、これは中々容易ではない。はじめの内は、合気道の上達、精進のために稽古をしていること、技を錬磨するということ、否、技とは何かなど意識しないだろうし、例えその重要性に気づいても分からないはずだからである。
誰でもそうだと思うが、はじめの内の稽古は、力をつけ、体をつくる肉体的な稽古になり、上記のような事柄には興味が持てないものである。

この肉体的、相手に対する相対的な稽古を長年やってくると、必ずその稽古の限界に突き当たるはずである。技が上手く掛からなくなったり、体を痛めるのである。
私の場合は、過って肩が動かなくなり、白帯の初心者に一教などで抑えられても悲鳴を上げるほど痛かったものである。これまでの肉体的な稽古のつけである。
そこで肩が痛くならないような技づかいの稽古をするようになった。今考えると、肩の激痛は辛かったらが、お陰で稽古のやり方を180度転換することができたと感謝している。また、これで学んだことは、肉体がいろいろと教えたり、判断したり、指示しているということが分かった事である。それ故、体との対話が大切であると分かり、肉体に耳を傾けるようにしている。

肩が痛くならないように体をつかうためには、肩を貫かなければならない。腰腹の力や手先の力が肩で止まらないように、貫くのである。肩を貫くためには肩を十字につかわなければならない。肩を十字につかって肩が貫けると、手先と腰腹が結び、腰腹の力が手先に伝わることになるのである。正面打ちで切り下ろしたり、横面打ちで切るのは、此れでやらなければ十分に切れないはずである。

ここまでは以前に書いたことがあるので、今回はこの先を書く。この正面打ちや横面打ちが更に強力なるにはずである。
それは布斗麻邇御霊とアオウエイと陰陽十字でやることである。
アーで、天之御中主神で腹に気を満たし、オーで、天之御中主神(腹)と高皇産霊神(足)と神皇産霊神(足)で三位一体となる。ウーで、伊邪那岐神ので腹を横に返し、そして伊邪那美神ので体を上下に返す。次に、十字をつくると、ここから気が産まれる。ここまではウーである。エーで今までの吐く息が引く息にかわりとなる。イーで手先と腹と引く息吐く息が一つに収まり大八島國となる。尚、このエとイは、相手を投げたり、剣を切り下ろす場合につかわれる“エイ”で緊密な関係にあると云えよう。

これまでは、まず宇宙の法則は陰陽十字しか知らなかったが、次に布斗麻邇御霊、そしてアオウエイを知るようになり、これこそが宇宙の営み・法則の極致であろうと感激し、これで技をつかえば完璧だと思った。
しかし、布斗麻邇御霊だけでも、アオウエイだけでも技は上手くつかえない事も分かった。やはり、布斗麻邇御霊とアオウエイを陰陽十字でやらなければならないのである。

すべての合気道の技(形)だけではなく、剣(含む居合)でも、また、四股踏みや柔軟体操でも、この布斗麻邇御霊とアオウエイと陰陽十字でやらなければならないようだ。