【第776回】 技の名前で原点に帰る

合気道の基本的稽古は、基本技を繰り返し々々稽古し続けていき、上達していくことである。初めは技の形を覚えることからはじまるが、段々慣れてくると、頭で思い出したり、考えなくとも、体が無意識の内に動いてくれるようになる。この段階になると、技を掛けるのが楽しくなり、合気道の稽古をしていると実感できるようになる。
そして、今度は相手に負けないように、相手を投げよう抑えようと、相手を意識する相対的な稽古になってくる。この段階の稽古で技を覚え、体ができ、力がつく。

大半の稽古人はこの段階に長くあるように見る。何故ならば、稽古人達はこの段階から中々抜け出せないで滞留しているからである。
何とか、この段階から次の段階へ進んでもらいたいと願ってはいるが、本人自身がそれに気づかなければならないから難しい。
しかし、そうも言っていられないので、この段階を抜け出す方法を提示してみたいと思う。

一言で云えば、壁にぶち当たったら原点に戻れ・帰れということである。原点に帰って学ぶ事は幾らでもあるだろうが、今回は“技の名前“に帰ることにする。

どんな武道や武術でも技には名前がある。各技と名前には切っても切れない関係があり、技の名前がその技の全貌を表したり、技の要点をしめしたりと、技の名前は非常に重要なはずである。技の名前を付けた先人たちは、名前をつけるにあたって非常に考え、迷いながら苦労されてつけられたと想像する。従って、技の名前に合った、名前に相応しい技をつかわなければならないと思っている。これを原点に帰って、稽古をすればいいということである。

合気道の技は無限にあるわけだが、その内の基本技で名前があるのはそれほど多くない。しかし、その名前には非常に大事な事が含まれているのである。
例えば、一教から四教である。一教、二教、三教、四教と数字の番号があるが、番号があるということは、1,2,3,4という順番があるという事である。そしてまず、その一教が一番の基であるという事である。実際、一教ができなければ二教、三教、そして四教は難しいということになる。更に、技をつかっていくとわかるはずだが、二教の技は一教に繋がり、三教は二教、四教は三教に繋がっている。一教の体をしっかりつかえば二教になるし、二教の手をかえしていけば三教の手の形に成るなどである。

また、一教、二教、三教、四教の名前は新しい名称で、それ以前は一教を腕抑え、二教を小手回し、三教を小手ひねり、四教を手首抑えと称していた。
従って、一教は腕を抑えて制し、攻めることが大事な技ということになるし、二教は小手を回して技をつかわなければならないし、三教は小手をひねるのがポイントになる技であり、四教は手首を抑えてきめる技という事になるわけである。これを間違えると技にならないということである。

この他にも、小手返し、入身投げ、呼吸法等という名前の技がある。小手返しは小手を返す技である。小手がどこか分からなければ技にならないし、小手を返さなくとも技にならない。小手返しという名前を粗末にしているから、小手ではなく手首返し(手首痛め)をしようとしてしまうのである。
入身投げは、身を入れることである。陰陽十字、三角体や息づかいなど注意し、身につけることが沢山あるはずである。
呼吸法は呼吸力養成法であるから、技のように相手を投げたり抑えるのが目的ではなく、呼吸力をつけることが大事と云う事になる。

原点に帰り、技の名前を認識し、技の稽古に再挑戦してはどうだろうか。