【第773回】 フトマニ古事記 その3 布斗麻邇御霊“高皇産霊神・神皇産霊神”

『大本言霊学』では、 高皇産霊神
                 両神合躰の御霊
             神皇産霊神
“父の母のミゾみ母のミゾ亦父のを搦む”
がこの段の見出しである。

そしてこの両神の解説になる。部分的に抜粋、省略、補充している。
「この御霊は両神合体の御形なり、タカムスヒの神とは即ち玉搦タマカラムということなり。カミムスヒの神とは搦結の火水ということにて、その言義はに搦結へばを搦結ふと云ふ御名。其搦時にの御霊の動くを“宇麻志阿志訶備比古地の火水カミ(イキ)”と云う。,亦動き廻りて上に別れて昇るを“天常立の火水カミ(イキ)と云う。亦動き回りて下に降りるを”國の常立の火水カミ(イキ)“と云う。次に動くを”豊雲野の火水カミ(イキ)“、次に動くを”角杙の火水カミ(イキ)・ 活杙の火水カミ(イキ)“、次に動くを”意富斗能地の火水カミ(イキ) 大斗能辨の火水カミ(イキ)“、次に動くを”淤母陀流の火水カミ(イキ) 阿夜訶志古根の火水カミ(イキ)“と云う。是の如く火水動き回り火水イキ興開きて搦々てツイに鶏卵のごとく凝カタマリて五体の基をなす。此御霊の御形を以て知るべし。是までの一段は天地人の気の搦て天地をなし、水火搦て人をなす。万物搦こと皆一なり。」

この一段は、「天地人の気の搦て天地をなし、水火搦て人をなす。万物搦むこと皆一なり」が主旨であるという。

合気道では、タカムスヒの神、カミムスヒの神、(カ)水(ミ)(イキ)、宇麻志阿志訶備比古地を初め、これらの神々が出てくる。特に、國の常立の神と豊雲野の神が大事なようである。『大本言霊学』のここでは搦結や搦という言が重要なようで、よくつかわれているが、合気道ではこの搦は使われない。この搦、搦結を合気道では“結ぶ”、また螺旋、十字と言っていると思う。

次に合気道での解釈である。合気道開祖の大先生は、タカムスヒの神・カミムスヒの神の御霊に関して次の様に言われている。
「“からだ”は五臓五体といって造り主に神習い、足は高御産巣日、神産巣日となって、つまり霊系の祖と体系の祖に神習い、三位一体である。気はちょうど、三角法になっている。」(合気神髄 P.146」
<要点>高御産巣日は霊系の祖、神産巣日は体系の祖であり、天之御中主の神と三位一体で、気は三角法になっているという事。日は霊と同じ。 
これが『大本言霊学』にある“鶏卵のごとく凝カタマリて五体の基”であると考える。

「宇宙の動きは、高御産巣日神、神産巣日神の右に舞い昇り左に舞い降りるみ振舞の摩擦作用の行為により日月星辰の現われがここにまた存し、宇宙全部の生命は整って来る。そしてすべての緩急が現われているのです。」
<要点>高御産巣日神は右に舞い昇り、神産巣日神は左に舞い降り、両神は舞昇りと舞降るの摩擦作用行為をし、万有万物を生み出し、緩急を現わす。
これが円になりとなると考える。
御中主神だけでは円はできない。高御産巣日神と神産巣日神が働いてくれて初めて円になるのである。また、御中主神がしっかり働いてくれないと高御産巣日神と神産巣日神、そしてその後の伊邪那岐、伊邪那美も働けないのである。

過って大先生は、たまに道場でご自身が御中主神になり、高御産巣日神、神産巣日神と三位一体となり、神楽舞を見せて下さった。特に、を杖や扇子で天を突き回し、高御産巣日神、神産巣日神の右に舞い昇り左に舞い降りるみ振舞の摩擦作用を見せて下さった姿を覚えている。

次に、この高皇産霊神・ 神皇産霊神の両神合躰の御霊を合気道の技でどのようにつかえばいいかという事になる。
先ず、己が御中主神になったら、高御産巣日神、神産巣日神の右に舞い昇り左に舞い降りるみ振舞の摩擦作用の気を生み出し、天と地と己を結ぶ。そして、立つ所に天盤、地盤のふみをもって霊系の祖と体系の祖を左の足に、ずっとそこの国まで突き戻して、常立の姿に宇宙一杯に気の姿を拡げるのである。

そして、この高御産巣日・神産巣日神の天(上)と地(下)の気の縦の流れが伊佐那岐・伊佐那美神は横への気の流れと結び、この二つが相まってラセン状に舞い上がり、舞い下がる合気道の気の結びが生じ、十字になる。と次回に続く。

参考文献 『大本言霊学』出口王仁三郎著 八幡書店
『言霊秘書』大宮司朗監修 八幡書店