【第770回】 頭にもしっかり働いてもらう

「第736回 頭をつかう」で、技を掛ける際は頭をつかわなければならないと書いた。今回はこの続きになる。何故、同じようなテーマになったかというと、稽古を続けている内に、どうしても頭に働いてもらわなければ技は上手くいかない事を痛感したからである。とりわけ、正面打ち一教には苦労しているわけだが、この頭にしっかり働いてもらうことが重要であることを再認識したことによる。
正面打ち一教は難しい。合気道の原理原則の塊のように思える。それ故、これまでも正面打ち一教は合気道の基本中の基本技(形)であると思っている。
この原理原則の塊を一つ一つ見つけ、解明し、身につけていかなければならないわけである。

これまで、手と腹をしっかり結び腰腹で手をつかうわかければならないと書いてきたし、技を掛けて稽古してきた。大先生は、「手、足、腰の心よりの一致は、心身に最も大切なことでる。」と言われている。しかし、これでも、正面打ち一教では限界があることが分かってきた。相手がしっかり力一杯打ってくる手はなかなか上手く捌けないものである。相手も腰腹と結んだ手でしっかり打ってくるので、力と力が同質となり拮抗することになり、動かなくなったり、返されてしまうのである。

これを解消するのが頭である。物質面での頭である。頭で手を動かし、相手の力を捌くのである。腹と結んである手を頭で動かすのである。頭で拍子を取ると云ってもいいだろう。
これで手と腰腹と頭が連動して動き、相手との接点にある手刀と他方にある手の内(手掌)に強い力が出ると共に、“気”が生まれる。この気によって、相手の手や肘・腕に己の手刀をくっつけ、そして相手の力を制し、導くことができるようになるのである。合気道は引力の養成であるといわれるが、相手にくっつく引力がでてくれば、気が出て働いていることになると思う。従って、相手の手・腕を自分の手で掴まないことである。くっつけるのであるこれは有川先生が再三注意されておられたことである。

頭とは、首、顔面、頭頂などで構成される。頭をつかうためには、これらの構成部位を意識するといい。頭をしっかり保ち、働いてもらうためには首がしっかりしなければならない。顔面はお腹と同様に捻ってつかわないことである。顔面・頭だけを動かすと捻ることになる。顔面・頭と腰腹、そして手を一緒につかうのである。更に顔面・頭で手を動かすようにするとスムーズにいく。腰腹→顔面・頭→手という順序で動くことになるようだ。この内一つでもこれに反すると、正面打ち一教は上手くいかない。勿論、呼吸法も他の技(形)も上手くいかないはずである。また、剣を使う場合もこれであると思う。

前出しの論文で書いたように、頭は相当重く、予想以上に働いてくれ、そして重要な働きをしてくれることを改めて感得した次第である。お陰で正面打ち一教がちょっと先に進むことができたようだ。