【第768回】 赤玉 白玉

前回書いたように、布斗麻邇(ふとまに)の御霊からこれまで分からなかった事や新たに重要なことが分かってきた。しかし、更なる疑問も生まれてきた。その一つが赤玉と白玉である。縦横からの玉が生まれ出ることは分かったし、生み出すことが出来るようになったが、このが赤玉、白玉であるということが、①どういう事なのか、またどういうものなのか、②そしてどうすればその赤玉、白玉を創り出すことができるかという問題が出てきたわけである。今回はこの赤玉白玉の研究をしたいと思う。

赤玉白玉を大先生は、塩盈(しおみつるの)珠、塩涸(しおひるの)珠とも言われているが、ここでは赤玉白玉をつかう事にする。
先ずは、①赤玉白玉はどういう事なのか、またどういうものなのかである。
赤玉も白玉も完全な十字からつくり出される丸い球(玉、珠)である。合気道はこの玉をつくり出さないと技にならないはずである。魄の技を脱し、魂の技に入って行くためには必須であると考える。
但し、この赤玉白玉の玉は風船玉のような玉ではなく、“金剛不壊の珠“である。すべての合気道の技の形(一教とか四方投げ等)は勿論のこと、剣や杖でもこの“金剛不壊の珠“の赤玉白玉でやらなければ合気にならないはずである。

次に、②どうすればその赤玉、白玉を創り出すことができるかということである。まず、赤玉である。赤玉白玉は決して白玉赤玉にはならない。赤玉が先で、その後が白玉にならなければならないからである。
赤玉をつくるには、体と息(気)を十字につかわなければならない。「上達の秘訣 第766回 の上に収める」で書いたように、腹を横、そして腹と手を縦と┛に返すが、これではまだ完全な十字ではない。そこで、手先を伸ばし切った処で、縦に伸ばしてある手先、腕、腰腹を横に拡げる。これで手先と腹と前足と後ろ足の縦の線と腹と両肩と両手の横の線で完全な十字の╋になる。すると他方の手先、腕、腰腹も十字になり、これで丸い玉が出てくる。両手で玉を抱くような感じになる。この丸い玉がである。
尚、息はここまで引く息であるが、阿吽の呼吸であり、腹中が広がり、息と気が腹中満たされる。塩が盈つる感覚、そして“金剛不壊の珠“を持つ気持ちになる。これが赤玉である。

赤玉を持ったところから、更に阿吽の呼吸で息を引いていくと、後ろ側にあった手と足と腰が更に返り腹が締まってくる。この時につくられる玉が白玉である。この玉も“金剛不壊の珠“である。
赤玉白玉というのは、赤玉をつくったら、それを白玉に変えるということであると思う。赤玉をしっかり作らないと白玉もできないのである。
また、重要なのは、赤玉も白玉も阿吽の呼吸でやらなければならないことである。

諸手呼吸法などは、この赤玉白玉をつかわなければ、強く掴まれた場合は制するのが難しいはずである。
この赤玉白玉が技の形を徒手でつかえるようになれば、剣でつかえばいい。大先生の剣は、俊敏で強力、そして美しかったが、この“金剛不壊の珠“の赤玉白玉を駆使されていたからだと拝察する。