【第765回】 古い衣服を脱ぐ

合気道は技と体を練って精進していくわけだが、精進・上達していくために技や体をどのように練ればいいのかということになる。
これまでは技と体を宇宙の法則に則ってつかっていくことがそれらを練る事であり、そしてそれが精進・上達であるとしてきた。
しかし、この事は正しいが、どうも更に大事な何かがあるようなことが分かった。これまでの精進を土台にして、その上に何かを載せなければならないということである。

大先生は、「合気道は、周知のごとく年ごとに、ことごとく技が変わっていくのが本義である」とか、「合気は日々、新しく天の運化とともに古き衣を脱ぎかえ、成長達成向上を続け、研修している」と教えておられるのである。
つまり、技は変わらなければならないということである。勿論、技そのものは宇宙の営みを形にした宇宙の法則であるから、時代や場所によって変わることはない。技が変わって行かなければならないのは、己がつかう技と言う意味である。つかう技は、年ごとはいうまでもなく、日々変わって行かなければならないという事である。質と量が変わらなければならないという事である。己のつかう技の数を増やし、技の深みを出すようにしていくことである。

もう一つの意味は、技が変わって行くためにも、身に付けている古いモノ(衣)を脱いで、新しいモノに変えなければならないということである。この古いモノ(衣)とは、間違ったり不完全な技、考え、思い込み等であろう。

大先生は、そのためにどうすればいいのかを、具体的な例で次の様に教えられておられる。
「昔は鳥船の行事とか、あるいは振魂の行事、いままでの鳥船や振魂の行ではいけないのです。日に新しく日に新しく進んで向上していかなければなりません。それを一日一日新しく、突き進んで研究を、施しているのが合気道です。」
我々も準備運動などでやっている鳥舟と振魂も、先人から教わったままやっては駄目で、一日一日新しく、突き進んでいかなければならないということである。
それでは実際どうすればいいかというと、鳥舟・振魂の基本を先人から教わり、それが出来るようになったら、今度は新しく進んでいくのである。重心の移動、腰の返し、手先・指先に気と力を入れる、手先と腰腹を結ぶ、エイサ、エイホの掛け声の出し方、半身・横向き・一重身での鳥舟等、やることは無限にあるものだ。勿論、崩してはいけないモノや規則もあるが、他は自由にできるはずであり、先人も許してくれるだろうし、喜んでくれると思う。

鳥舟・振魂のように、己のつかう技を一日一日新しく、突き進んで研究していかなければならない。同じことをただ繰り返していても上達はないということである。やるべきことは無限にある。一つを身に付けたら次に挑戦していくのである。そのためには古い衣服を脱いでいかなければならない。