【第764回】 人差し指を鍛え、駆使する

「第607回 人差し指の不思議な働き」で、人差し指が不思議な働きをする重要な指であることを書いたが、最近、人差し指の更なる働きと重要性があることが分かった。
また、以前、親指についても書いた。指の親として親指をつかわないと力も出ないし、いい技にならないということである。親指を無暗に動かさずに、周りの子供たちの指をつかわなければならないのである。すべての技でそうしなければならないが、それが分かり易いのは坐技呼吸法や諸手取呼吸法などの呼吸法である。親指を先に上げたり下げたりして動かすと上手くいかないのがわかるはずである。
因みに、何故、親指を先に、また無暗に動かしては駄目なのかということが分かった。合気道では手を刀としてつかうから、刃筋である尺骨が常に相手を切る状態になるようにつかわなければならないからである。親指を動かしてしまうと刃筋は相手に向かわずあさっての方を向いてしまうのである。

刃筋が通るように親指が働くためには、人差し指が重要なのである。人差し指がしっかりとして働いてくれれば親指も十分に働いてくれるのである。逆に、人差し指がしっかりしていなければ親指はうまく働けないのである。

人差し指に息を吐いて息と気を指先の縦方向に流すと親指にも指先の縦方向に気が流れ、また、息を引き乍ら人差し指を指先方向と十字の横に息と気を拡げると、親指も気によって横に拡がる。そして人差し指と親指は十字の直角となり強固に結ぶ。更に、人差し指と親指がしっかり結びつくと小指にも気が満ち、そして親指と人差し指ともしっかり結びつく。息づかいが大事である。因みに、親指と人差し指、人差し指と小指は十字の形になる。この十字から気が産まれるようだ。その理想的な大先生のしっかりした指と手の姿の写真をつかわせてもらう。

人差し指は自分が進む方向、気を出す方向に体と気を導く働きをする。相手が正面打ちで打って来れば、指先から気を込めた人差し指を相手の正中線上を頭越しに出し、人差し指の方向指示によって技を収める。相手が手を掴んで来れば、気で満たした人差し指を相手に向け、相手と一体化したら、後は人差し指の方向指示で収める。言うなれば、人差し指で技と体をつかうという事である。
体を進めたり、気を出す方向を人差し指がその役割を果たすわけであるが、これは体術だけではなく、剣でも同じである。その例を下の写真で紹介する。人差し指は打つ所を向いている。剣が人差し指の延長となり、剣が手として働いているということになろう。
この人差し指の形での剣のつかい方は、上手い下手は別として出来ない事はない。前出しの親指と人差し指、人差し指と小指に気を入れて十字の形にするのである。ここで人差し指に更に気と入れると親指と小指が締ると、剣をしっかり握ることになり剣と手が一体化し、そして剣を己の手のように自由につかえるようになる。
人差し指の重要さに気づき、人差し指を意識してつかい、そして鍛えていかなければならない。