【第761回】 高齢者の健康の基

人によって違いがあるだろうが、他人のこと等分かるわけがないから己自身の事で語るしかないだろう。
70歳ぐらいから高齢者は、体力も落ち、こういうものかと自覚するようになる。頭や体がこういう風になるのか、これまでとここがこのように違うようになるのか等を思い知るわけである。そして体力を維持するために食べること、睡眠、運動、稽古等を以前より大事にするようになる。
しかし、80歳近くなってくると、大分体に注意してきたにも拘らず、まだ時として体調がおかしくなってきた。特に、猛暑での稽古に対してはこれまでの注意では不十分であることがわかったのである。例えば、頭や体がふらついたりしないよう、塩分を控えたり、アルコール入りのお酒を飲まないようにしたり、水の取りすぎに注意したり、そして足腰の下半身を山坂を登ったり、階段などを使うなどして鍛えた。
お陰で、今年の猛暑の稽古も日常生活(買い物、散歩等)も乗り越える事ができた。

しかしながら、猛暑を乗り越えてこれで万全かと稽古や日常生活をしているのだが、まだ、体調が万全ではないことを感じたのである。街を歩いたり、稽古に通う道すがら頭や足腰がフラッとすることが偶にあるのである。まだ何かがおかしいのである。最早、このふらつきは猛暑のせいではなく、何か高齢者の宿命的な問題ではないかと思ったのである。

そこでその問題の原因と解決法を真剣に考えることにした。
まず、道場で多少激しく稽古をしても頭も体もふらつくことはないことである。道場で動いていて問題がないのに、通常の動きで問題が出るという事である。もう一つのヒントになったのは、一緒に稽古をしている友人が道場で、稽古場に昇り降りする階段を満足に上り下りできなくなったというのだが、稽古が終わった後は、階段を下りるのは楽になり、調子がいいというのである。
そこで頭と体のふらつきの問題、更に友人の問題の原因は足腰の衰えだと分かった。稽古で足腰を鍛えているから十分だと思っていたが、不十分であったという事である。若い時分はそれで十分だったわけだが、年を取るにつれて足腰の衰えが、稽古や日常生活で鍛えるよりも早いという事である。これが高齢者という事だとつくづく感じさせられた次第である。

さて、頭と体のふらつきの原因が足腰の衰えにある事が分かったわけであるが、次はその解決法である。
それはふくらはぎを更に鍛えること、つかう事である。これまでも、前段階でもふくらはぎの重要性には気づいており、道を歩く時に意識して使ったり、エスカレーターやエレベーターをなるべく使わずに階段をつかうようにはしてきた。しかしこれでは不十分であったという事である。
それでは何故不十分だったのか、どうすれば十分になるかということになる。

己の歩き方と若者達の歩き方をあらためて比べてみると、自分の歩く速度が若者と比べるとは半分ぐらいに遅いことである。私は、所謂、ナンバで歩いているので若者達の歩き方より歩幅も狭いし、また、意識して急がずゆっくりと歩いていたので仕方がないと思っていたが、どうもここに問題と解決策があるように考えたのである。

下半身の足腰で、特に大事なのはふくらはぎ(腓腹筋)であるようだ。何故ならば、ふくらはぎの筋肉は下半身の血液を上半身に循環させる役割を果たしているため、第2の心臓と呼ばれているからである。そしてふくらはぎの筋肉が弱ると鬱血して血栓ができやすくなる(エコノミー症候群)といわれるのである。
つまり、只、足腰のふくらはぎをつかえばいいという事ではなく、ふくらはぎが下半身の血液を上半身に循環させることができるようにつかわなければならないのである。つまり、あまりゆっくりの速度で歩いてもふくらはぎは十分下半身の血液を上半身や頭に送ることが出来ず、頭がふらついたり、足腰が不安定になるわけである。
そこで歩く速度を若者に近づけるべく歩いてみると、頭も体も元気に喜んでくれている。勿論、ナンバ歩法である。ふらつきもなくなった。どうもこれが正解のようである。勿論、歩く速度は、残念ながら若者には敵わない。

尚、前段階の下半身、ふくらはぎを階段をつかう等で鍛えたのは、肉体を鍛えたわけで、次の段階の鍛えはふくらはぎの機能を鍛えたということになるわけである。

因みに、多くの高齢者が町を歩いている。一生懸命に歩いているが速度は遅い。もう少し速度を上げて歩けば頭の働きとか体調が良くなるのではないかと思う。ふらつきが解消されるだけでなく、食欲も出るし、熟睡できるはずである。肉体的にふくらはぎと下半身を鍛え、そしてふくらはぎのポンプ機能を一緒に鍛えることができるのである。
これが健康の基、基本中の基本であるように思える。