【第757回】 天の叢雲くきさむはら竜王の“くき”

過って大先生から、「合気道は天の叢雲くきさむはら竜王の働きであります。天のむらくもとは、宇宙の気、オノコロ島の気、森羅万象の気を貫き息吹く気の働きであります。くきとは、大地の妙精の現れと、天の現れとを一つに貫く、即ち天と地の両刃の剣です。さむはらとは・・・」と幾度となく伺っていたので、今でもこの文章は耳に残っている。そして又、“天の叢雲くきさむはら竜王“を知りたいと思っていた。

最近、「合気道上達の秘訣」の『第756回 手を合気道の手としてつかう』や「合気道の体をつくる」の『第757回 関節が各々独立して働くように』で書いたように、手が少し上手くつかえるようになったが、それに合わせるように、この天の叢雲くきさむはら竜王の“くき”が分かったようなのである。
分かったという事は、体で実感し、技で表すことが出来るということである。これが合気道に於いての分かったということであり、一般的な頭で理解したものとは異なると考える。従って、合気道も大先生の教えも頭だけで理解しようとしても無理だと思う。頭で理解しようとすることは必要だが十分ではないということである。体と技での理解が必要ということである。従って、難解な大先生の教えを理解するためには、体と技のレベルを上げなければならないことになる。

さて、天の叢雲くきさむはら竜王の“くき”である。
“くき”とは茎と考える。何故ならば、そう実感できるからである。
茎は根の地と花の天への上と下に伸び、引き合っている。大先生は、「くきとは、大地の妙精の現れと、天の現れとを一つに貫く、即ち天と地の両刃の剣です」と云われているが、前出しの2つの論文で書いたように、手の平の角度を天の息を吐いて45度、地の息を引いて90度に返すことによって、手がしっかりした天と地の両刃の剣になる。

また、天の叢雲は、「天のむらくもとは、宇宙の気、オノコロ島の気、森羅万象の気を貫き息吹く気の働きであります」とあるように、気の働きであるから、この両刃の剣は気の剣という事になる。そしてこの気の剣が天の叢雲くきさむはら竜王の働きとなり、これがこれまでの魄の力に頼ったものとは異なる真の合気道である。これを「合気道は天の叢雲くきさむはら竜王の働きであります。」と大先生は言われているはずである。

この天の叢雲くきさむはら竜王の働きの合気道は、これまでと異次元の合気道であり、これこそが合気道であると実感し、合気道の修業に真からの喜びを感じるようになった次第である。