【第753回】 縦横の神業

合気道は技を練って精進していくから、出てくる技によって上達の程度がわかることになる。どのぐらい上達したのかを一言で云えば、どれだけ宇宙の営み・法則を身に付けたか、技に取り入れたかということになると思う。
大先生の技は宇宙の営み・法則で満たされていたので、超人的に強力で無駄がない美しさであったわけである。

我々合気道家はこの大先生の技に少しでも近づくべく稽古を続けているわけだが、それは容易ではないことは承知の通りである。
大先生のような技をつかえるようになるのは、ほぼ不可能だろう。しかし大事な事は、大先生および大先生の教えに少しでも近づいていく事であると考える。その指針に反しない稽古の姿勢と心がけである。例えば、宇宙楽園建国の生成化育であり、魂の学びである。そして宇宙の営み・法則を見つけて技に組み込んでいく事であると思う。

大先生の教えは広く深い。宇宙の法則も無限にあるようだ。ひとつ出来たと思うと、次が出てくると限りがない。しかし有難いかぎりである。
最近の教えの法則は、「縦横の神業」である。これまで合気道は十字道ともいわれるように、水火むすんで縦横の十字で技をつかわなければならないと書いてきたが、縦横十字は更に深い意味と重要さがあることが分かったのである。

相対稽古で相手に技を掛けると、相手に力があったり、相手が頑張ったりすると、こちらの手が折れたり曲がったりして力が伝わらないことがある。特に、技をつかって体の方向転換をする場合に多い。左から右などの横に返す際、また、前から後ろの縦に返す際である。手足や腰腹を十字々々につかい円でやっているのだが、円の軌跡が切れたり乱れるのである。軌跡が切れたり乱れれば、相手は無意識の内にそこを責めてくることになり、その技を上手く収められなくなる。

この技の軌跡の切断や乱れをなくし、相手に争う気持ちをなくす法則を見つけた。勿論、大先生の教えである。
その教えとは、「水火結んで縦横となす、縦横の神業。自然に起きる気。気はすべての大王である。」(合気神髄P151)である。
これを片手取り呼吸法や正面打ち一教を想定しながら説明する。

何故ならば、この縦横十字から気が生じ、そしてその気の大王によって神業が生まれるという事だと解釈するからである。 縦横の神業である。