【第752回】 体の十字

合気道は十字道とも云われるほど十字が重要である。合気道の技は陰陽十字でつかわなければならないので、息と体を十字につかわなければならないことになる。技そして息と体を十字につかわなければならない理由は、それが宇宙の条理・法則だからである。この陰陽十字の法則は、万有万物に課せられたものであり、合気道の技にも課せられているという事だけではなのであるからである。

これまで合気道の技をつかう際は、体の部位を十字につかわなければならないと書いてきた。例えば、手先・手の平の十字、肘の十字、肩の十字、足底のあおりによる十字、左右の足の撞木の十字、腹と前足との十字等々である。
十字をつくるということは円の動きにすることである。合気道の技は円の動きの巡り合わせであるから、円をつくり、そのため十字が不可欠になるのである。

今回は更に「体の十字」を加える。
体の十字とは、体が縦と横、下と上の十字にすることである。例えば、手刀をつかうとすると、息を吐いて体を地に下ろした時、体は前方に縦に下り、進む。体は安定し、堅固になる。前に出した手には体重がのり、強い力が出る。
そして息を引く(入れる)と、体は縦に対して横に膨らむ。肩の四関節(胸鎖関節、肩鎖関節、肩峰下関節、肩甲上関節)が働くと手が自然と上がってくるが、体は下に沈み安定する。 

この体の十字をつくると、手を上げても下げても、体は安定し堅固になり、そしてそれが乱れない。これまでは手を上げても体はふらつき、手を打ち落してもふらついていたが、これが体の十字で解決出来そうである。

この体の十字が、息と体でつかえるようになると、技でもつかえるようになるし、剣や杖の得物も合気道的につかえるようになるはずである。この体の十字は法則に則っているということである
先述のように、合気道の技の法則は宇宙の法則で、万有万物に当てはまらなければならない。
例えば、鳥のつばさの動きである。人の体の十字と同じ法則で飛んでいるはずである。体を進む方向の縦、次に横に翼を広げはばたき、そしてまた縦の方向に体を進めているはずである。鳥も体の十字をつかって飛んでいることになると思う。

これまでの末端や部分的な部位の十字を研究してきたわけだが、今回、体全体の十字に辿り着いたわけである。これで技も多少変わるはずだと思う。

参考資料:Canon Bird Branch Project