【第750回】 踵と指球

合気道の上達の基準は技であると思う。技が上達すれば合気道は上達したと云えよう。技の上達とは、技が幅広く密になることだと考える。技が幅広いとは、技が剛であり柔であり、そして剛はますます剛になり、柔もますます柔になり、更に流になって三元の幅がどんどん広がることである。
密とは、つかう技が宇宙の法則・条理に則り、その法則・条理の技が点から線、線から面、そして立体的な三次元、更に時間的な四次元で構成されるようになっていくことであろう。初心者の技はその意味で粗であるが、上級になるに従って密になっていかなければならない。

技が密になるためには、体を密につかわなければならない。体を密につかうためには、体を良く知ることであり、体と仲良くなることである。
初心者の頃は勿論、10年ほど前までは体を知ろう等とは思わなかったし、体と仲よくしようなどとは考えたこともなかった。ただ、体を酷使していただけであった。しかし、今やっと己の体を少しでも知らなければならないと思い、体と仲良しになり、体からいろいろ教わっているところである。
これが出来るのも武道の合気道をやっているお陰と合気道に感謝している。恐らく生きた人の体の仕組みや働きをこれだけ探究しているものは他にはないだろう。

今回は、踵と指球について研究することにする。
武道では歩を進める際、体が上下したり前後左右にぶれるのはご法度である。合気道でも、相手を攻撃する受け手も、それを受ける取り手も体が上下しないようにしなければならない。
しかし、これは意外と難しい。やるべきことがあり、それをやらないと出来ないからである。
それでは体が上下しないで歩を進めるためにはどうするかというと、

A.踵と指球で進む
1. 踵から地に足を着き、次に
2. 指球で地を踏みしめる。指球で地を踏みしめると、
3. 反対側の踵が地に着くようになる

尚、これまで母指と小指の下にある盛り上がっている箇所を母指球,小指球といい、その役割を書いてきているが、今回はそれに加えて、その他の指の下にある盛り上がっている箇所を指球とした。2で地を踏みしめるのは母指球と小指球だけではなく、他の指の箇所もつかうからである。それを下の図に示す。

尚、歩を進めるためには踵から地に着けるが、指球から着く場合もある。例えば、入身で相手の側面に入る時は、踵からではなく指球から着く。これは有川定輝先生の教えである。進めた歩を止める場合は指球から着地し、前進する場合は踵からということになろう。

B.体三面に進む
体が上下しないで歩を進めるためには、体三面に進まなければならない。腰腹を陰陽十字に返しながら進むのである。これを大先生は、「心を丸く体三面に進んでいかなければならない」(合気神髄P.89 )と教えておられるのである。この体三面に進む教えは勿論、体が上下しない進みの教えでもあるはずだ。

この踵と指球と体三面に進めば、体はぶれず進むことが出来るし、そして又手先から力も出るようである。