【第750回】 宇宙生成化育の大道を歩むために

真の武道である合気道の目標は、宇宙との一体化であり、宇宙完成のへの宇宙生成化育にお役に立つことである。
合気道が真の武道であると大先生は、「真の武道は相手を殲滅するだけではなく、その相対するところの精神を、相手自ら喜んで無くさしめるようにしなければならぬ和合のためにするのが真の武道、すなわち合気道である。(合気神髄 P.173)」と云われている。
更に「真の武道には相手もない、敵もない。真の武道とは宇宙そのものと一つになることだ。宇宙の中心に帰一することだ。合気道では強くなろう、相手を倒してやろうと錬磨するのではなく、世界人類の平和のため、少しでもお役に立とうと、自己を宇宙の中心に帰一すること、帰一しようとする心が必要なのである。合気道とは、各人に与えられた天命を完成させてあげる羅針盤であり、和合の道であり、愛の道なのである。(合気神髄p.115)」と云われておられる。

それではこの宇宙生成化育の大道をどのように歩んでいけばいいのか、そしてそのために何が肝心なのかということになる。
これまでは合気道の技の錬磨をしていけば目的に達成したり、近づくことが出来ると考えていたが、どうもそれだけでは難しいようである。
大先生は『合気神髄』に、「宇宙の生成化育への大道を歩もうとする者は、己の心身統一をはかり、宇宙の魂を磨いて顕幽神三界を守り、天地和合の大道である合気道を律し、宇宙の真理の律法を明らかにしなければいけない。真実の「和」を達するには宇宙の真理に反しないことが肝要である。(合気神髄p.113)」と教えておられるのである。
つまり、合気道の技を錬磨することは引き続き必要であり主流であるが、技を磨くと同時に、次のことを身につけていく事が必要であると云われているわけである。

  1. 己の心身統一をはかる事:心の思うように体が動き、体の声を心が聞くように、心身が一体化して働くようにすることと考える。
  2. 宇宙の魂を磨いて顕幽神三界を守る事:自己の魂を磨き上げて、宇宙の魂と結び生きた技を出し、見える世界と見えない世界で武を現わし、汚れやカスを取り除いていく事だと考える。この「宇宙の魂を磨く」を大先生は、「自己の魂線を磨き上げて、宇宙の魂線とむすばねば、すべて生きた技は出て来ません。」と云われておられる。
  3. 天地和合の大道である合気道を律する事:天とも地とも和合できる道である合気道を、ある基準の基(宇宙の法則)でマスターすること。
  4. 宇宙の真理の律法を明らかにする事:宇宙の条理・法則を見つけ、技と体に取り入れていくこと。
  5. 宇宙の真理に反しない事:真実の「和」(天地との和、宇宙との和=時間空間を超越した和)に達するためには、宇宙の真理(条理・法則)に反しないようにしなければならないという事である。これは道場での稽古の時だけではなく、更に、武道を超越し、如何なる時間、場所、機会においてもそれに反しないようにしなければならないという事になる。
つまり、これまでの道場での稽古から、日常生活に於いてを含む全生活が修業ということになるわけである。

合気道の目標は、技の稽古だけでは十分ではなく、日常生活も修業の場となり道となる。これが合気道の道より大きな大道を歩むという事になるわけである。