【第745回】 魂を表に出す阿吽の呼吸
「合気道の思想と技『第706回 魂を表に出すのは阿吽の呼吸』」で魂を魄の上に出すのは阿吽の呼吸であると書き、そして阿吽の呼吸をつかっての稽古を試行錯誤しながらやってきた。その結果、更に分かってきたことがあるので書いて置くことにする。
まず、最初に、魂を表に出すためには阿吽の呼吸が必須である事を確信したことである。阿吽の呼吸なくして魂を表に出し、魄を魂で導くことは出来ないということである。
次に阿吽の呼吸の特徴がわかってきたことである。
阿吽の呼吸は、
- 体や手や足を上下、前後等陰陽に働かせる。例えば、阿吽の呼吸によって、手は手先(前)と肩や胸(後)に双方向に伸びる
- 手と足の各関節(手首、肘、肩、胸)(足首、膝、腰、腹)の各関節同士を離し、伸ばし、そして今度はしっかりと結ぶ。
- 気と力を、手先から腕、上腕、胸に集め、手先から胸を一本化し、足先から、もも、太腿、腰、腹に集め、足先から腹を一本化する。
- 胸に集まった気と力と腹に集まった気と力を結び、頑強な体をつくる。
- 胸と腹に集まった気を胸から肩、上腕、腕、手先に流す。この手先に流れるのは魄の力ではなく、気と魂の力である。この手が相手に触れれば、相手と結び一体化し、魂(心、念)で相手を導くことが出来るようになる。そして魄の体が土台となり、魂が上になると感得できるのである。阿吽の呼吸をつかわなければ、魄の力でやることになるのである。
阿吽の呼吸は、このように摩訶不思議な呼吸・息づかいである。アーと腹と胸で息と気(声)を出しながら、気と息を引く(吸う)のである。吸って吐くの陰陽を同時にする息づかいなのである。仁王様の阿形のアーと息と声を出しながら、お腹を気と息で満たしてお腹を膨らましているのを見ればわかるだろう。
更に、阿吽の呼吸は只息をしても阿吽の呼吸にならない。阿吽の呼吸になるためには、天地・宇宙との結びつきが必要なのである。天の気と結び、天の気を天の呼吸で地に下ろし、その気と結んでつかうのである。宇宙規模の呼吸ということになろう。
これまではイクムスビの呼吸をつかってきたわけだが、これが阿吽の呼吸になるわけである。阿吽の呼吸がつかえるようになるためには、先ずはイクムスビの息づかいを知らなければならないと考える。そしてイクムスビの息づかいをつかっていると、自然と阿吽の呼吸をつかえるようになるようである。
それでは、イクムスビと阿吽の呼吸の大きな違いは何かというと、イクムスビは魄の息づかいであり、阿吽の呼吸は魂の息づかいであると思う。手をつかうにも、イクムスビはイーで息を吐いて手を出し、クーで息を吸って手で相手を導き、ムーで息を吐いて技を収める。
阿吽の呼吸は、ンーで天の気と結び、アーで手足や体を気・魂(心、念)で満たし、満たした気・魂を手先足先に流す。そしてこれで魂が魄の土台の上にのり、この魂で土台の魄や相手を導くのである。相手は通常の魄の力を感じなくなるようだ。
魂を出すため、魂を知るためには阿吽の呼吸が要であるようだ。
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