【第744回】 対照力をつくる

以前から尾形光琳の「紅白梅図屏風」は素晴らしい、魅力ある作品であると思っていたが、何に引き付けられるのかがよくわからないままであった。
最近、また「紅白梅図屏風」にテレビで出会い、専門家によるその魅力の説明を得る事ができた。その説明を合気道の理合いで見てみると、「紅白梅図屏風」の魅力の理由が多少分かったようだ。

この作品の特徴は、一見単純にも見える色彩対比に、明と暗、直線と曲線、清と濁といった要素があるという。また、白梅を漢画系、紅梅を大和絵風にし、紅白梅と水流で抽象と具体、明と暗を対立させているという。
つまり、この作品の魅力の基は、対比であり、対立であるということであろう。要するに対照力という力に満ちた作品であり、それに魅せられていたということになるようだ。
この対照力でもう一度見てみると、密と粗、微と大、動と静、天と地、幽と顕、繊細さと大胆さ、目に見える世界と見えない世界、モノと心等々の対比が見えてくる。

紅白梅図屏風
合気道でも対照力は重要である。最も知られている対照力は一霊四魂八力の八力である。動、静、解、疑、強、弱、合、分 (開祖の言霊)であり、動と静、解と疑、強と弱、合と分に対照力が働くわけである。これらの八力は引力であり、対照交流する。
対照力はこの八力だけではない。例えば、東は西、南は北、陰は陽、明は暗、顕は幽、生は死に対する、と大先生は挙げられているが、対照力は億兆劫々の数限りなくある。そしてすべての対照力は「みな悉く両々相対して、その中間を極微なる点の連珠糸にて、掛け貫き保ちおるなり」という。

「むすぶこと、むすびあうこと、つまり一元が二元を出し、その二元がむすぶことであります。対照力によって各々二元の働きが出来る。対照力の起こりである。しかし二元の根源は一つであり、元は一つ。」という。例えば、強と弱が結び合っていれば一元であるが、そこから強と弱を取り出せば二元となる。そして強と弱がしっかり結べばそこに対照力が働き、対照力が起こる。しかし強と弱の二元の根源は、もともとはひとつの一元であるということなのである。
要は、合気道での技の錬磨において、一元の対照を見つけ(例えば、陰・陽、動・静、明・暗、顕・幽)、二元に分け、そしてしっかり結べば対照力が働き、対照力が起こるということであろう。

また、対照力によって天の浮橋が現われるという。技をつかう際には天の浮橋に立たなければならないわけだが、天の浮橋に立つためには対照力を起こさなければならないわけである。
対照力をつくり、対照交流するようにしなければならないのである。