【第742回】 高齢退化

傘寿近くなってくると高齢になるとはこうゆうことなのかがよく分かるようになってくる。それまで気にもしていなかった体の不調や衰えがどんどん表面化してくるのである。これを高齢退化とする。
己が経験した高齢退化はここ2,3年だけでも10本の指では数え切れない。ざっと書いてみると、

○ ズボンや靴下を立って履けなくなる
○ 道や階段でつまずく
○ 起き上がる時や道を歩いていてふらつく(酒のせいではない)
○ 食欲が無くなる。食が細くなる
○ 腕や足が細くなる
○ 体重が減り、なかなか戻らない
○ 眼や耳が悪くなる
○ 姿勢が猫背となり悪くなる
○ 熟睡が難しくなる
○ 足腰が弱くなる
○ 記憶力が低下、物忘れが悪くなる
○ 体が硬くなる 等々

これは程度の差はあれ、年を取れば誰にでも付きまとうものであろう。今若くとも、誰でも年を取り、そして高齢退化する。
しかし問題は、これらの高齢退化をどう受け止めるか、そしてそれにどう対処するかである。すべての高齢退化を素直に受け入れることもできるだろうが、高齢退化に少しでもあがなおう、対抗しようと思うはずである。何故ならば、人は己の使命を果たさなければ満足することが出来ないので、少しでも健康で長く生きたいという本能が働くはずだからである。例えば、合気道をやり続けようと思えば、これらの高齢退化を少しでも食い止めたり、改善しなければならないと思うはずである。

私自身も上記の高齢退化には苦労した。一時は、これで合気道の稽古も出来なくなるだろうとも思ったのである。しかし、お蔭様で一つ一つこれらの高齢退化の問題を解決することが、取り敢えず出来たようで、今では稽古に支障がないまでになった。
そこでこの中で特に深刻だった高齢退化とその対策・解決法を、次に紹介する。

○ズボンや靴下を立って履けなくなる
合気道の息づかいでやるようにしたら、立ったままズボンも靴下も履けるようになった。まず、天の息を足下の地に落し、そして息を引き乍らくるぶしを支点に下と上に力を出すのである。これで地に着いている足はしっかりするので、ズボンも靴下も履けるのである。

○道や階段でつまずく
つまずいた原因は、爪先から地に着いていたからである。爪先を上げて、踵(正確には“くるぶし”)から地に着き、少し遅れ気味に小指球・母指球を地に着け、そして爪先が地に着く(触れる)ように歩を進めればつまずくことが無くなった。

○起き上がる時や道を歩いていてふらつく
一時これはひどかった。稽古でも頭がふらつくので前受身も取れず、また、気分も悪くなったので、稽古をしないでタクシーで帰宅したことがあった。朝起ようとしても頭がくらくらし、思うように動けなくなり、これで合気道ともおさらばかと思ったものである。
しかし、よく観察してみると、調子のいい時と悪い時があるのである。そこで調子を良くしたり悪くするには原因があるだろうと、その原因を考えてみた。そしてその原因を見つけたのである。それは“塩分”である。塩分を摂り過ぎるとてき面にふら付くし、あまり取らないとふら付きがなくなるのである。それ以来、塩分は極力取らないか、最小にすることにしたのである。お陰で、道路を歩くにも、稽古でもふらつきはなくなった。街を歩いている高齢者で偶にふらつく方がおられるが、もしかすると、塩分を控えれば改善されるかもしれないと思う。

この後の高齢退化の問題は今研究中であるので、成果が出たら発表することにする。