【第742回】 タカアマハラになる

合気道の修業の目標は宇宙との一体化である。そのためにこれまで、宇宙の営みを形にした技を身につけ磨いてきた。宇宙の法則に合した技を身につけることによって宇宙を取り入れ、宇宙化してきたわけである。
また宇宙と一体化すべく、天地の気と天地の息に合わせて技をつかってきた。天地の気と息に合わせて、息や体がつかえれば、宇宙に近づけることになると思うからである。

更に、今度はタカアマハラになることによって、宇宙と一体化を図ろうと思う。
タカアマハラとは、全大宇宙のことであるから、タカアマハラになることは大宇宙になるということである。が、そんなことが可能なのかということになろう。しかし大先生は、「タカアマハラも自分にあるのであります。天や地をさがしてもタカアマハラはありません。それが自己のうちにあることを悟ることであります。(武産合気P.47)」と云われているのである。ただ、タカアマハラが自己のうちにあることを悟らなければならないのである。

タカアマハラは「造化器官で、すべてのものを生み出す家なのです」とある。万有を生み現わすということは、技も生みだすということにもなるわけである。つまり、タカアマハラになれば、技を生み出すことができるし、技を生み出すためにはタカアマハラにならなければならないという事である。

タカアマハラは六言霊と云われる。つまり、六つの“ことだま”(=ひびき)であり、次のような働きと力があるという。

対照力
掛け貫く力
神霊顕彰、而して宇宙也
全く張りつめたる玉
神霊活気臨々、至大照々
循環運行
これを相対で相手に技を掛ける際にどのように作用するか見てみる。
で相手と結び、そこに相手との対照力が働く。
で対照にある相手に気を貫く。所謂気の体当たりである。
で“神霊顕障宇宙全くはりつめる”と気をはりつめる。
で“全く張りつめて玉となる”とあるように、己が張りつめた玉になる。
で気が活気臨々、至大照々と活動する。
で気が運行循環、循環運動する。相手を投げたり抑えたりする。
タカアマハラの言霊のタからラまでを技につかって行けばいい。要は、技にも人にも、このタカアマハラの六言霊がなければならないということである。この六言霊の言霊はひびきであり、これを魂のひれぶりと考える。

そしてまた、タカアマハラを一言霊ずつつかうのではなく、一つにまとめてつかうのである。つかり、ラにタカアマハの六声がふくまれると生きた動きになり、螺旋となり、めぐりめぐり際限なくひろがり、技を生み出すことができるようになるというのである。それを、大先生は、「タカアマハラのラの一声が六声をすべてふくめて生命の動きとなり、らせん状態となり、めぐりめぐり際限なくひろがり、整頓し、その中に器官が出来たのです。すべてのものを生み出す営みの現れが出来たのです。」(武産合気P.64)と言われておられるのである。ラにタカアマハラを含め、そのラで技と体をつかうのである。