【第738回】 四教は胸と腹を鍛える技

「合気道の体をつくる 『第739回 手をつくる』」で詳しく書くが、技を掛ける際に重要なのは、足首と手首、膝と肘、腰と肩、腹と胸鎖関節と、手と足の対照の部位をしっかり結んでつかうことである。
また、手と足の各々の部位はその対照部位と結んでいるわけだが、各々の部位は腹とも常に結んでいるので三か所で結んでいることになる。例えば、膝は腹と肘、肘は腹と膝に結んでいることになる。
尚、技をつかう際は、その結んだ箇所の先を一本につかわなければならない。例えば、膝と肘を結んだら、膝から下の足と肘から先の手を折れ曲がらないように“一本“でつかうのである。

この結びでどの形(技)もつかわなければならないわけだが、やりやすい形とやり難い形がある。
例えば、足首と手首を結んでやりやすい形は、一教、入身投げ等;膝と肘を結んでやりやすい形は、二教、小手返し等;腰と肩を結んでやりやすい形は、三教、腰投げ等;腹と胸鎖関を結んでやりやすい形は、四教、坐技呼吸法等であろう。

さて、本題に入る。基本技に一教、二教、三教、四教がある。これらの基本技は、以前は別な名称があった。一教は、腕抑え、二教は小手回し、三教は小手ひねり、四教は手首抑えである。この名称から、技と手をどのようにつかえばいいかが分かり易いだろう。
しかし、最近では、一教、二教、三教、四教と言っているので、どのような技をつかえばいいのか、その各々の特徴や違いはどこにあるか等不明確になってきているようである。典型的なのは、一教と二教の表の違いが無くなってきているように見える。
取り敢えずは、以前の腕抑え、小手回し、小手ひねり、手首抑えという言葉にもどって、この言葉にしたがって技と体をつかっていかなければならないと考える。例えば、小手回しや小手ひねりの“小手”が分からなければ、二教や三教が上手くいくはずがない。

更なる違いと、重要さが一教、二教、三教、四教にはある。これによって、一教〜四教の基本技がよりその違いが分かると同時に、その技のつかい方も明確になるはずである。
しかし、それが分かり、そして一教、二教、三教、四教が上手く出来るようになるためには、上記の“足首と手首、膝と肘、腰と肩、腹と胸鎖関節と、手と足の対照の部位の支点をしっかり結んでつかえなければならない。

一教は、主に足首と手首を結んで技と体をつかい、そして鍛える形(技)であると考える。二教は、膝と肘、三教は腰と肩、そして四教は、腹と胸鎖関節を結んで技と体をつかい、そして鍛える形(技)であると考える。もう少し詳しく書くと:

(正面打ち)一教では、足首と手首を結んで、爪先を伸ばし、伸ばした手先としっかり結んで、結んでいる腹で技と体をつかうと上手くいく。
足首と手首を結んでつかう形は一教がいいが、一教は膝と肘、腰と肩、腹と胸鎖関節を結んでもつかえる。これが一教の奥深さであろう。

二教は、小手回しであるから膝と肘を結んで、一緒につかわなければ上手くいかない。足首と手首、腰と肩、腹と胸鎖関節も出来ない事はないが難しいはずである。これは一教とは違うだろう。

三教は、小手ひねりであるから、腰と肩を結んでつかわないと上手くいかない。肩を腰に落し、腰で肩をつかうのである。

四教は手首抑えであるから、剣を絞るようにして相手の手首を抑えるのだが手首に力が集まらないものである。その問題を解消するのが、腹と胸鎖関節と結んでつかうことである。胸鎖関節のところは胸であるから、腹と結んだ胸で相手の手首を抑えるのである。
四教は胸と腹を鍛える技なのである。

尚、足首と手首、膝と肘、腰と肩、腹と胸鎖関節を結ぶ稽古は、剣や鍛錬棒や杖でも出来る。

最後に一教から四教の名称とその深い意味である。
一教は足首と手首、二教は膝と肘、三教は腰と肩、四教は腹と胸と結ぶ部位が末端から中心に向かって移っていることである。つまり、体の末端に近い処から中心へ一、二、三、四と順序よく移っていくのである。だから誰も一教、二教、三教、四教という数字と違和感を持たないのだと思う。技の名称には深い意味があるのである。