【第731回】 上達のステップ

今回は、「第727回 魄から魂の学びへの要件とステップ」で約束したように、そこにあった図表(下記)の説明をしたいと思う。

これまで半世紀以上にわたって合気道を稽古してきたことでいろいろなことが分かってきた。
その内のひとつが、合気道の上達のためにはやるべき事(要因)があり、それを一つづつ会得し、そしてそれを土台にして次の要因を身に付けて行くということである。
その要因として図表には、「a.魄力(体力・腕力)⇒ b.手と腹を結ぶ⇒ c.息をイクムスビで⇒ d.魄を土台に魂を上に⇒ e.天地の呼吸で⇒ f.自己の魂⇒ g.魂」がある。
この力で技と体をつかって技の錬磨の稽古をしていくのである。

a.魄力(体力・腕力)であるが、先ずは魄の力を養成しなければならない。図表で明白なように、このa.がb.からg.までのすべての要因の土台になっている。魄が魂の土台になるということはこのことでもあるわけである。
また、a.の上達ラインだけは、初めは右肩上がりの傾斜であるが、或る処からその上達はなくなり、精々現状維持であるということである。
a.は魄の稽古は大事であるが、これを土台にして次の要因に移っていかなければならないということなのである。

次に“b.手と腹を結ぶ“について一寸説明をする。これが重要であると思うからである。何故ならば、この”b.手と腹を結ぶ”によって、合気道の稽古の質が変わる第一段階目ななるからである。量から質へ変わる初めなのである。また、魄の稽古からの脱却のスタートであると考える。
諸手取呼吸法がそのためのいい例である。己の片手で相手の二本の手(諸手)を制しなければならないわけだが、それまでのように己の腕の力では1対2であるから理論的には敵うわけがない。
相手の諸手に適うためには、それよりも強力なモノをつかわなければならないことになる。それは体幹、胴である。これまでの腕の力に頼っていたのを、体幹をつかうことになるわけである。体幹をつかうためには、手と腰腹を結んで腰腹をつかうことになるので、手と腹を結ぶことが、手に頼る魄の稽古から次のステップに進むための重要な要因になるということなのである。
要因の後の残りc.からg.はこれまでの論文で書いているので省略する。

b.から後の要因を身に付けると、a.の右肩上がりの上達と異なり垂直上達になる。これはその前の要因での次元と質が変わり、異質であることを示すものである。

要因の次は、要因と関連づけて、上達を力の質で区別したものである。
そしてその次は、顕界の稽古から魂の学びの稽古への段階を、上段の要因と質との関係に於いて区分けしたものである。

魄の稽古から始まり、魂の学びの稽古に入ってくると、このような上達のステップがあったことが分かってくるのである。これまでの稽古は一生懸命に稽古をしていたが、これは点の稽古であり、また、己個人の力による稽古であったが、それが理合いの稽古になり、幽界の次元の稽古になり、そして天地・宇宙の力をお借りする稽古に入って行き、そして真の合気道の魂の稽古に入ろうとしていくわけである。
つまり、真の合気道が目指す、魂の学びの稽古に入るためには、このような要因、質を身につけ、そしてこの段階を経ていかなければならないということが分かるわけである。
習い事には王道はないということである。地道に一つ一つ身に付けていかなければならないということである。