【第728回】 つまずき防止ポイントはふくらはぎ

街に出掛ける時は、和服で雪駄で出かけているが、或る時から雪駄の先を道の一寸した出っ張りなどに引っ掛けてつまずいてしまうということが再三起こるようになった。稽古のお蔭で、幸いつまずいても即態勢を立て直すことはできたが、これでは不味いと思い、何とかこのつまずきを無くそうと決めた。

そこで、つまずく原因を考えてみた。まず、街を歩く高齢者の歩き方を観察してみると、つまずいてもおかしくない歩き方をしている高齢者が多いことに気付く。爪先から地に足を下ろしているのである。そして下ろした爪先を地に着けたままで次の足に移動し、蹴って進まないので、幸いにもつまずくことは避けられているのである。これに比べて若者たちは、踵から着地し、爪先に体重が抜けるように歩いている。爪先が上がるのでつまずかないわけである。
雪駄を履いての自分の歩き方を見てみると、爪先近くに体重を落として歩いており、それ故、爪先が十分上に上がらず、何かに引っかかるとつまずくということが分かった。

そこで爪先を上げて歩くためにはどうすればいいかを研究してみた。その答えは、踵から歩くことである。つまり、踵から足を地に着け、そしてその体重を爪先に抜くのである。これは合気道での稽古での基本的な体のつかい方であるので、これを意識して技と体をつかえばいいと思った。(つまり、これまでの稽古ではそれが十分に出来ていなかったという事になるわけで、反省しなければならない)

次につまずく原因を調べたところ、ふくらはぎに原因がある事が分かった。ふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)が硬くなったり、弱くなって十分働いてくれなくなるのである。

そこでふくらはぎを柔軟にし、強靭に鍛えることにしたわけである。
一つは、先述の踵から足を地に着け爪先に体重を移動することを、普段歩く時も稽古の時も意識してやることである。
二つ目は、柔軟体操でふくらはぎを柔軟・強靭に鍛えるのである。鍛えるのは呼吸である。ふくらはぎに息を吐いて伸ばし、更に息を引き乍ら伸ばし、そして息を吐いて更に伸ばすのである。三段式呼吸法でふくらはぎを伸ばすわけであるが、ふくらはぎは柔軟に伸びると同時に柔軟に強靱になるのである。
この三段式呼吸法で最もわかりやすく効果的と思われるのは四股踏みだろう。四股踏みでふくらはぎを鍛えるといい。
また、この三段式呼吸法は立っても、寝ていてもできるから、朝の起き掛けや電車に乗って立っているときなどでもやるようにしている。

お陰で今では雪駄でつまずくこともなくなったが、一寸気を許すとつまずきそうになる時もあるので注意している。
最後に、今回の教訓である。人はそして自分自身も年を取っていき、そして必ず体は衰えていく。その衰えを見つけ、それをカバーしていくことが、高齢者の大事な仕事になるだろうということである。