【第727回】 肩を貫いて、貫いた肩を固めてつかう

どんな武道もスポーツでも肩は強靭であることが要求される。肩が軟弱ならば、剣で切れないし、人を投げたり、球を投げることが十分にできない。
合気道も然りである。肩は強靭になるように鍛えなければならない。相対稽古での技の掛け合いや受け身、木剣や杖の素振りなどで鍛えるのである。
しかし合気道での肩は、強靭に鍛えればそれでいいというものではない。強靭に鍛えたら、今度は肩を貫かなければならないのである。そしてまた、肩を貫いたら、その肩を更に強靱にしていかなければならないのである。これが合気道の奥深さであり、面白い所であると思う。
尚、この肩を貫く内容や重要性はこれまで書いてきているので、詳しいことは省くが、肩を貫く必要性を一言記する。

まず、肩を貫かないと、肩で力と気がとまってしまい、腰腹の力と気が手先に流れないことである。そうすると肩を固定して手を振りまわすことになり、腕力に頼る技づかいになってしまうのである。
二つ目は、肩を貫かないと、天の浮橋に立つことができないということである。相手をくっつけて一体化出来ないのである。つまり、真の合気道にならないということである。要は、肩を貫かないと先の稽古に進めないのである。故に、肩を貫くことは必要なのである。

しかしながら、肩を強靭に鍛え、そして肩を貫いてこれで終わりではない。次があるのである。
今度は、貫いた肩を固め、貫いた肩を固めてつかうのである。
手先と腹を肩でしっかり結び、肩を固定し、腹で肩を動かし手と一緒につかうのである。これによって、足と腹の陰陽で、肩が陰陽につかえるようになるのである。技は、相手との接点側の肩を支点として動かさずに(陰)、反対側の肩を陽につかって掛けるのである。四方投げはその典型的技として分かり易いだろう。
肩が十分に固まっていないと、手先から腹の部位がしっかり結ばず、バラバラに動いてしまうので、大きな力は出ない。また、肩が固まらないと、肩を動かしてしまうので、体がねじれたり、ひねられたりすることになる。
体を反さなければならないが、そのためには、固めた肩と腹がしっかり結び、腹を陰陽十字に反さなければならない。

肩を固めるためには、相対稽古でそのような技づかいと体づかいをしながら身に付けていけばいいが、それまでのやり方に息づかいを加え、肩に息と気を通すように技と体をつかうといいだろう。

肩が固まってくると技が変わってくる筈である。例えば、肘ぎめなどが一瞬で決まるようになるものである。そして肘ぎめができるようになると、二教裏も更によく出来るようになるものである。逆に言えば、肘ぎめが満足にできるようになれば、肩が固まったと言えるのかもしれない。