【第725回】 天の気、天地の呼吸、地の呼吸・潮の満干と正面打ち一教 <その1>
合気道の極意技と思っている正面打ち一教に挑戦し続けているが、この技の難しい理由が増々わかってきたと同時に、大先生の難解の教えのひとつがわかってきた。この教えには多くの合気道家が四苦八苦しているはずである。
その教えは、「息を出す折には丸く息をはき、ひく折には四角になる。そして宇宙の妙精を身中にまるくめぐらし六根を淨め働かすのです。丸く吐くことは丁度水の形をし、四角は火の形を示すのであります。丸は天の呼吸を示し、四角は地の呼吸を示す。つまり天の気によって天の呼吸と地の呼吸を合わせて技を生み出す。これが人のつとめであり、その上吾人には八百万の神々が悉く道に守護してくれることになっている。
天の呼吸との交流なくして地動かず、ものを生み出すのも天地の呼吸によるものである。(中略)
天の呼吸は日月の息であり、天の息と地の息と合わして武技を生むのです。地の呼吸は潮の満干で、満干は天地の呼吸の交流によって息をするのであります。(『武産合気』P.76)
この教えの中に、武技を生み出すための教え、つまり法則が懇切丁寧に述べられているのである。これまでは難しくて分からないし、分かることがないのではないかとも思っていたが、注意深く読んでみると、大先生は丁寧に分かり易く教えておられることが分かる。
この教えの要点を挙げてみる。*は私の解釈である。
- 「息を出す折には丸く息をはき、ひく折には四角になる」:、
*吐く息は丸く、引く息(吸う息)は四角であるということと、息を吐く際は丸く、息を引く際は四角でなければならないということである。
- 「そして宇宙の妙精を身中にまるくめぐらし六根を淨め働かすのです」:
*この息を丸く吐き、四角に吸うことによって宇宙の気(妙精)が身中をめぐり、六根を浄め、そして働かすということである。
- 「丸く吐くことは丁度水の形をし、四角は火の形を示すのであります。丸は天の呼吸を示し、四角は地の呼吸を示す」:
*丸く吐く天の呼吸は水であり、四角い地の呼吸は火であるということである。
- 「天の気によって天の呼吸と地の呼吸を合わせて技を生み出す」:
*天の気によって、天の呼吸と地の呼吸が生じ、そしてこの天の呼吸と地の呼吸組み合わせで技が生み出されるのである。
- 「これが人のつとめであり、その上吾人には八百万の神々が悉く道に守護してくれることになっている」:
*この理を、技をつかう人は厳守しなければならない。その勤めを果たしていけば、八百万の神々が守って下さるし、支援して下さるのである。
- 「天の呼吸との交流なくして地動かず、ものを生み出すのも天地の呼吸によるものである」:
*まずは丸く吐く息での天の呼吸から始めなければならない。そうすると引く息の地の呼吸が働くのである。この天の呼吸と地の呼吸で技(もの)が生み出されるという事である。
- 「天の呼吸は日月の息であり、天の息と地の息と合わして武技を生むのです」:
*天の呼吸は地の呼吸に対する呼吸だったが、天の呼吸はまた、お日様とお月様の息であるのである。この日月の息(と思って)に己の息を合わせて丸く息を吐いて地に下ろせば、漠然と天の呼吸を吐いて下ろすよりやり易い。 後半の部分は、この上の項で説明してあるから略す。
- 「地の呼吸は潮の満干で、満干は天地の呼吸の交流によって息をするのであります」:
*地の呼吸は潮の満干、つまり潮満の玉(赤玉)と潮干の玉(白玉)からなっているという事である。つまり、潮満の玉(赤玉)と潮干の玉(白玉)は息を引きながら働かせなければならないということである。しかし、これは容易ではない。息を引きながら腹中の玉を気で満たしたり干したりしなければならないからである。
以上、“天の気、天地の呼吸、地の呼吸・潮の満干”について研究してみた。残った箇所、正面打ち一教でこの教えをどのようにつかうことになるのかは、分量の関係から次回にする。
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