佐々木合気道研究所

【第723回】 腹をガッチリ鍛える

魂の学びの合気道に入ろうと、魄ではなく魂で技を使おうと挑戦している。
技はまだまだ思うように魄でない力でつかうことは出来ないが、大先生の教えのお蔭で、出来るモノが少しずつ増えてきているようだ。この点的なものが線となり面となり球となればいいわけだから、その始まりが開始されたと言えよう。後は修業を続ければいいはずである。
また、ここで変わってきたことに、これまで超難解であった『武産合気』『合気神髄』が不思議な事に、急に理解できるようになってきたことである。
この両書は見えない世界である幽界で幽界の合気道を書かれた事がわかったからである。両書は魄の合気道の上達のためには何も書かれていないのである。つまり、魄の稽古をしている内はこの『武産合気』『合気神髄』は理解出来ないし、参考にならないはずである。幽界の稽古、魂の学びの稽古に入らなければその教えは理解出来ないし、参考にならないと確信したのである。

前口上はさておき、今回のテーマに進むことにする。今回のテーマは「腹をガッチリ鍛える」である。こんなことは当然だし、今さら取り上げることもないだろうと思うかも知れないが、それには理由がある。簡単に言えば、魂の技をつかうためにはどうしても必要だからである。つまり、これまでの「腹をガッチリ鍛える」は、魄の技づかいのためであったということである。勿論、これも必要であるが、今度のは異質なのである。次元が違うのである。何故ならば、大先生が『合気神髄』でその重要性を次の様に強調されているからである。
「武は技と光を結ぶことに力を入れなければなりません。その結びは中心がなければなりません。中心があるから動きが行なわれるのであります。中心は腹であります。腹がガッチリしていれば、心は正勝・吾勝に精進できます。」（合気神髄 P.68）
要は、結びの中心である腹がガッチリしていれば、心（魂）が働いてくれるということだろう。心の技、魂の技がつかえるようになるということなのである。
確かに、腹がガッチリしていれば、魄の力でない魂（心）で技がつかえるようになるのである。ガッチリした腹にガッチリした手と足が結べば、腹中の力（気力）が手先、足先まで伝わり、相手の接点にその腹からの大きな力が掛かるので、この力を土台にして、魂（心）で技と体をつかえることになるのである。

それでは腹がガッチリするためにはどうすればいいのかということになる。
二つの方法があるようである。一つは物理的方法、もう一つは精神的方法である。
まず物理的方法である。相対での形稽古でガッチリした腹をつくっていくことである。

• 陰陽十字などの法則に則って、理合いで技と体をつかうことによって鍛えていくのである。例えば、正面打ち一教で説明してみる。①地の足を地に着き反対側の手を上げる。②上げた手を同じ側の足下に落す。③この足を地に着け気を地に落すと反対側の手が上がる。後はこの陰陽の繰り返しである。但し、足が左から右、右から左に変換する際にただ足の重心が変わるのではなく、腹中（の玉）の左右、そして前後の移動によって行うのである。このために腹は柔軟でそして堅固でなければならない、つまりガッチリしていなければならないのである。因みに、この腹の移動をつかわない場合は、所謂、魄の技ということになるのである。
  正面打ち一教や諸手取呼吸法はこれでやらないと魄の技となるのである。
  ＜解説＞この方法は、大先生の言葉にはないが、内容や中身は大先生のお教えを集め応用したものである。従って、下記の方法とも関係があることになる。
• 「息を吸い込む折には、ただ引くのではなく全部己の腹中に吸収する。そして一元の神の気を吐くのである。」
  ＜解説＞全部己の腹中に吸収するように思い切り息を吸い込むと仁王様の「阿」の姿のようなガッチリした腹ができるし、そこから一元の神の気を吐いても「吽」の姿のようなガッチリした腹ができる。因みに、一元の神の気とは、高御産巣日神と神産巣日神の二元の舞い昇り舞い降りる摩擦作用が結び、一元の天之御中主の神に帰り、そこから一元の神の気が吐かれるということだろう。この感覚は、剣を振ってみると分かり易いだろう。思い切り息を吸い込み、左右の手足で陰陽から息を吐いて振り下ろす際は、左右の手足が一つになり、強力な殺傷力が生まれる。
• 「天の呼吸、地の呼吸を受け止めたのが人なのです。・それで天の呼吸、地の呼吸（潮の干満）を腹中に胎蔵する。自分で八大力の引力の修行をして、陰陽を適度に現し、魂の霊れぶりによって鍛錬する」
  ＜解説＞息づかいは上記の通りである。この息づかいから、八大力（動、静、解、疑、強、弱、合、分）を産み、その陰陽で産まれる魂で技を鍛錬するということだろう。
• 「腹中にを収め、自己の呼吸によってをの上に収めるのです」
  ＜解説＞はく息はである。ひく息はである。吸い込んだ息に円く息を吐いて収めるのである。この息づかいは通常のものと違うので意識して直さなければならないはずである。

次に、腹がガッチリするための精神的な方法である。この方法に関しても、両書に大先生の教えが沢山あるがその例を挙げてみる。例えば、

• 「合気道は古の神器の姿（勇智仁）を、みな自分の腹中に胎蔵して修行していかなければならない。」
  ＜解説＞腹中に人として欠くことのできない心の宝である三種の神器（御剣、御鏡、御玉＝勇、智、仁）を入れて技をつかい、修業していくこと。腹中が空っぽでは腹は出来ない。
• 「天地の真象を眺めて、そして学んでいく。そして悟ったり、反省したり、学んだりを繰り返していかなければいけない。要するに武道を修行する者は、宇宙の真象を腹中に胎蔵してしまうことが大切で、世界の動きをみてそれから何かを悟り、また書物をみて自分に技として受け入れる。ことごとくみな無駄に見過ごさないようにしなければいけない。すなわち山川草木ひとつとして師とならないものはないのである。」
  ＜解説＞技の稽古でだけでなく、宇宙の真象や世界の動きを見たり、本を読んでそれを技と体に取り入れることである。つまり、勉強しなければ腹も出来ないという事である。
• 「この合気だけは小さい神さまじゃない。世界中の天津、国津の八百万の神々に、ことごとくご協力いただいております。顕幽神三界も、また我々の稽古の腹中に胎蔵しております」
  ＜解説＞天津、国津の八百万の神々にご協力が頂けるよう、そして顕幽神三界が腹中に胎蔵するようになれば腹はできるということである。等々

魂の技をつかうためには、腹はガッチリ鍛えなければならないし、その鍛え方は大先生の教えの中にある。後は実行するだけである。