【第716回】 次の次元の上達のために
これまで700回以上に亘って「上達の秘訣」を書いてきたが、これからは「次の次元の上達のために」を研究していこうと思う。
これまでは真の合気道のための土台づくりに於いての上達の秘訣を研究してきたということになる。何故そう言えるのか、それでは次の上達とは何か等に説明しなければならないが、それを説明する前に、これまでどのような稽古をしてきたのかを簡単にまとめてみる。
- 合気道の基本の形を覚える:
一教から五教、四方投げ、入身投げ、小手返し等々の基本の形を正面打ち、片手取り、後ろ取り等で、また単独、二人掛け、多人数懸け等で掛ける事を覚え、身につける事である。
- 合気道の体をつくる:
上記の基本の形を掛け合い、そして受けを取り合うことによって合気の柔軟で強健な体をつくることである。また、これで不十分だと思えば、木刀や鍛錬棒等を振って自主トレーニングをする事である。
- 技を身につける:
宇宙の営みを形(かたち)にした技の法則を身につけることである。陰陽や十字等の法則に則って、技と体をつかい宇宙の営み、そして宇宙と一体化していく事である。
- “イクムスビ”の息づかいを身につける:
技を“イクムスビ”で掛けるようにする事である。初めは体で技を掛けるが、体に先行して息で体をつかい、技を掛けるようになる。
これらの稽古、ここまでの稽古は次の次元の稽古への土台づくりなのである。所謂、まだ魄の稽古ということになるわけである。合気道は魂の学びであるわけだから、この魄の稽古から抜け出さなければならないわけである。
勿論、これまでの魄の稽古が無駄ということではなく、その反対に絶対に必要であるし重要なのである。この稽古の重要さは想像以上であると言っていいほど大事なのである。何故ならば、魂の稽古のために土台となるからである。土台がしっかりしていなければ、魂の働きも十分できずいい技が産まれないからである。この魄の稽古の重要さは次の次元で再認識することになる。
それでは先述で残した答えである。何故、これまでの稽古は次の次元のための土台づくりであったというかというと、次の次元に足を踏み入れたから分かったといえる。その新しい次元からこれまでを見返せば、それがわかるのである。つまり、土台づくりの魄の稽古をしている間はそれが見えないのである。
次に何故次の次元に足を踏み込むことができたかである。
その一つは、大先生の教えが分かったことである。“合気道は魂の学びである“と” 魄の世界を魂の世界にふりかえるのである。魄が下になり、魂が上、表になる。“の意味する事がわかったことである。
二つ目は、この教えを技で実践していくと、これまでと違う次元の結果が出るようになったからである。
勿論、長年に亘って土台づくりをしたことが根底にある。5年や10年でつくられるものではないだろう。
そしてこの次元からこれまでの稽古を顧みると、これまでの稽古は土台づくりであり、真の合気道の準備段階であったことが分かるのである。
更に、次の次元に足を踏み入れることが出来た要因がある。それは阿吽の呼吸の重要さが分かったことである。阿吽の呼吸をつかえなければ次元を変えることは出来ないし、出来ないと思う。
次の次元に入って上達をしたいならば、まず、①やるべきことをしっかりやって土台づくりをすること ②合気道は魂の学びである事を肝に銘じる事③阿吽の呼吸を身につけることと考えている。
更に、稽古のやり方も変わらなければならないと考える。これまでの“稽古”を“修業”に変えなければならないだろう。これまでの一日の内の何時間かの道場稽古から、一日中、どこでも稽古であるという、日常生活が稽古になるようにしなければならないということである。生活も物質科学から精神科学、競合から愛、小乗から大乗に変わらなければならないだろう。
Sasaki Aikido Institute © 2006-
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