【第714回】 地上天国建設のために

合気道の目標は地上天国の完成のための生成化育である。地上天国建設のお手伝いをすることでる。これが大乗の合気道であり、宇宙の為、万民の為、万有万物の為の合気道である。この為にも小乗の合気道の修業も必須である。この小乗の合気道の目標は宇宙との一体化である。勿論、この小乗の合気道を会得するもの容易ではない事は誰もが知っての通りである。

小乗の合気道を身につけるのが難しいのに、地上天国のための大乗の合気道をするのは更に難しいだろう。小乗の方は、宇宙の営みの技を錬磨していけば、宇宙との一体化が出来るだろうと思うが、地上天国建設のためには、何をどのようにすればいいのか分からないからである。恐らく、小乗の合気道で宇宙との一体化が出来た暁には、大乗の合気道もできるようになるのだろうが、それでは何時出来るようになるのか、出来るようになるのかどうかも分からない。

大先生は、合気道を修業している人に対して、「地上天国建設精神にご奉公をするのが、合気の根本の目的なのであります。」と言われている。この意味は、地上天国建設にご奉公する事ということと、もう一つ、合気道家の誰でもこれを目的として修業しなければならないということである。つまり、小乗の合気道を会得しなくとも、下手でも、初心者でも、合気道を修業している誰もが、地上天国建設の精神でご奉公しなければならないという事だろう。

そうなると、技も満足に出来ず、小乗の合気道が完成していない稽古人はどうすれば地上天国建設にご奉公することができるのかということになろう。
しかし、これは一寸考えれば、そう難しいことではないことが分かる。地上天国建設とは、一般的には“いい世の中にする”ということである。邪悪、汚れを除き、真善美、喜びが増えるようにご奉公することであろう。

それではその為に、どのようなことが出来るかと言うと、

  1. 合気道家として、人はみんな仲間であり、家族であるということを肝に銘じ、そしてそれを他人や他国に啓蒙することである。何故人は皆仲間であり、家族かと言えば、万人は皆地上天国建設の為に頑張っているからである。そういう意味で、動物も植物も、所謂、万有万物は仲間であり家族なのである。一度その目で周りを見れば分かるはずである。
  2. 他人も万有万物も家族であるから、挨拶や最低の対話は必要になろう。
    例えば、有難う、すいません、お願いします等である。外国でもこの三つの言葉を云えば、お互いに通じ合い、いい気持になり、いい雰囲気ができ、その場が天国になる。これを英語では、Thank you, Sorry, Please ドイツ語では、Danke schoen, Entschuldigen (Pardon), フランス語では、Merci,Pardon, S'il vous pla?tといい、これだけでも小さな地上天国が出来る。一度試してみればいい。ここに笑顔があればなおいい。
  3. 日本で気をつけなければならないことに、人を上下に位置付けて見、対処する事がある。西洋の横社会に対して縦社会である。特に会社などの組織では、役職の上下とその人物が同じだと思ってしまうことである。部長だから平社員の人格が劣るわけではない。それはその組織を離れれば明白である。
    これに関連して、お店とお客の関係も日本ではお客が偉く、店員は下と思われている。
    お互いに地上天国をつくろうとしている同士であり、仲間と考えれば対等になるはずである。少なくとも、2.での三つの言葉ぐらいつかってみるといい。
周りの人たちや草木を、地上天国建設精神にご奉公している仲間であり、同士であると見るようになれば、この世もまんざらでないように見えてくるだろうし、他人や万有万物のそのご奉公を支援しようと思うし、そして合気道の修業も一層励むようになり、合気道の使命を果たさなければならないと思うようになる。つまり、人も万有万物も、地上天国建設精神にご奉公するためにあるということと、それを邪魔する邪悪を武で排除することである。