【第711回】 親指支点の手のつかい方の稽古法

「第706回 親指」で親指を支点とした手のつかい方が大事であると書いた。今回は、その稽古法、つまり、「親指支点の手のつかい方の稽古法」を研究してみたいと思う。
いつも言っているように、このような事は相対での形稽古の中で身に着けばいいわけだが、よほど他の事に気を取られずに集中し、上手くいかなくとも落胆せずに忍耐強く稽古なければならないので容易ではないだろう。
そこでこの親指支点の手のつかい方の稽古を、どのようにすれば分かり易く、又身に着き易いかをまとめてみたいと思う。
大きく二つの稽古法に分ける。
一つは、一人稽古、もう一つは相対稽古である。
先ず一人稽古で親指を支点として手の平を返す稽古である。
 1−1 正面打ち
 1−2 横面打ち
 1−3 米の字素振り運動(仮称)
正面打ちと横面打ちは日ごろ稽古しているから形は分かるだろう。
後は、親指を支点として小指側を下に旋回(正面打ち)したり、内旋(横面打ち)すればいい。勿論、手先と腹を結び、息で手先を強靭にし、腹で切り下ろさなければならない。
尚、この正面打ちと横面打ちでの親指支点の手のつかい方は、次の「米の字素振り運動」に含まれるので、「米の字素振り運動」が出来れば出来るようになるはずである。よって、ここでは「米の字素振り運動」を詳しく説明することにする。

この「米の字素振り運動」は私がつけた名前であるから、この名前はどうでもいい。しかし、この「米の字素振り運動」は、本部道場の師範であった有川定輝先生が公案されたものであるから、大切につかわせて頂ければならない。因みに、有川先生はこの運動に名前は付けられなかった。
これまでは只、米の字に手を振っていたのだが、最近になってようやく、この「米の字素振り運動」は親指支点の手のつかい方の稽古法でもあることが分かったのである。今のところ、親指支点の手のつかい方の稽古法でこの「米の字素振り運動」以上の単独稽古法はないように思う。
米の字に手を返していくわけだが、親指を支点として、小指側を旋回させて、十字十字に手の平を返していくのである。その手の平の返しを、完全ではないが、部分々写真で示してみる。(尚、写真を撮る関係上、左手をつかったものになってしまった)

米の字素振り運動 (左手)
米の字素振り運動が本来どのようになるのかを、有川先生ご本人の形でお見せする。
次に相対での最適と思う稽古法である。
 2−1 片手取り転換法
 2−2 片手取り呼吸法
 2−3 後ろ両手取(呼吸法)
 2−4 坐技呼吸法
とあるが、これらは親指支点の手のつかい方をしないと上手くいかないことが分かり易いく、親指支点の手のつかい方を上手くやるとよく効く事が明瞭になるものであるからである。
また、注目すべきは、これらの稽古は基本中の基本で、大先生の時代からどの先生も必ずやっておられたことである。特に、片手取り転換法は準備運動のかわりにやられていたほどである。当時はその重要さは分からなかったが、この片手取り転換法は親指支点の手のつかい方の基本中の基本の稽古法であったのである。何故ならば、この片手取り転換法が出来れば、片手取り呼吸法が出来るようになるし、出来なければ片手取り呼吸法もできないはずである。そして片手取り転換法が出来で、片手取り呼吸法が出来るようになってくると後ろ両手取(呼吸法)、そして坐技呼吸法も出来るようになってくるようだからである。

親指支点の手のつかい方を身につけるなら、先ずは「米の字素振り運動」と「片手取り転換法」から始めたらいいと考える。