【第709回】 正面打ち一教の難しさの解明

前から書いているように、正面打ち一教は、初心者が最初に覚える形であり最もやさしい形であるが、高段になると最も難しくなる形(技)である。従って、正面打ち一教は合気道の極意技であると考えている。正面打ち一教が出来る程度に、合気道の技が出来るという事でもある。

最近になって分かってきたことの一つに、正面打ち一教は只稽古を続けて行けば身に着くものではないということである。ではどうすればいいのか。
その答えは、やるべき事を見つけて、それを技と体に取り入れていかなければならないということである。やるべき事とは、基本の必須の法則であり、色々な法則があるわけだが、その中のいくつかの絶対に欠かすことのできない法則で、この法則を欠けば正面打ち一教は上手く掛からないということになるわけである。この基本の必須の法則を昔は、秘術とか、極意等と言っていたはずである。

この基本の必須の法則を教えて下さったのは、有川定輝先生である。有川先生の正面打ち一教は、無駄なく自然で美しく、力強い武道的であり芸術的である理想的なものであると思う。これまで先生の正面打ち一教の技づかいを思い出しながらそれに少しでも近づくよう、先生の姿を思い出したり、映像を見、どこにその秘密があるのかを考え、試行錯誤しながら技と体を練ってきている。
お陰で最近ようやく、これまで見えなかったところが見えるようになり、そしてそれを技と体でつかえるようになってきたようなので、それを書いてみる。

まず、合気道の技の動きは、剣道と大いに関係があるということを再認識しなければならないと思う。例えば、手と足と腰腹を陰陽十字につかうこと、阿吽の呼吸、居つかない事などあるが、正面打ち一教の関係では、まず初めに気で抑えること、敵の剣(合気道では手)を弾くのではなく、くっつけてしまい、手を正中線上に使い、魄の体を土台にして気で抑え、気で導くことであり、体重が剣(左右の手先に交互)に掛かるよう、体をつかう事等がある。
従って、合気道の手は名剣としてつかわなければならないことになる。

それではこれまで見つけた合気の理合いを基に、基本の必須の法則と思うモノを有川先生の正面打ち一教の映像の中で見てみたいと思う。

  1. まず最初は、天から地に気を落とすと地から抗力が上がってくる。同時に手先が上がってくるが、手は地に引っ張られて手の下側が重くなり体重がのってくる。(写真1、写真2)
  2. その手を、阿吽の呼吸の阿で気を体に満たし、親指を支点として小指側を外に返しながら、入身して手を真っすぐ伸ばし、相手の打つ手と十字にし、体重がのって相手はその後ろ足に体重がのるように結ぶ。(写真3、写真4)
  3. 打ち込んでいる陽の右手から肘にある左手に陽を移すために、腹を相手に向け、両手の中心に腹がくるように体幹を十字に返す。(写真5)
  4. 手は相手とくっつき、こちらの魄の力が地と結び下になるので、魄の力ではなく、この上の魂(心、念)で相手を導くことができるようになる。足は常に撞木足。(写真6)
まだまだ基本の必須の法則があるはずだが、先ずはこの4つの基本の必須の法則を身につければいいと考えるが、それ以前の体と技の基本的な法則、例えば、折れ曲がらない手、阿吽の呼吸、陰陽十字の体と技づかいなどができていなければ出来ないはずである。習い事は地道な積み重ねである。